中高年の心血管死亡率、景気動向との関連は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/15

 

 米国の中高年層において、郡レベルの経済的繁栄の相対的増加と、心血管死亡率のわずかだが相対的減少とは有意に関連していることが示された。米国・ペンシルベニア大学のSameed Ahmed M. Khatana氏らが、2010~17年の死亡率に関する後ろ向き研究で明らかにした。米国における非高齢成人の心血管死亡率は、過去10年間でその低下が停滞しており、一部の集団では増加している。この背景には所得格差の拡大があると考えられているが、心血管死亡率と景気動向が関連するかどうかはこれまで不明であった。JAMA誌2021年2月2日号掲載の報告。

米国約3,000郡の経済的繁栄と心血管死亡率の変化との関連を解析

 研究グループは、米国の3,123郡における経済的繁栄の7つの指標の変化と、40~64歳の居住者における郡レベルの心血管死亡率との関連を、後ろ向きに解析した。

 経済的繁栄の変化は、米国国勢調査局のAmerican Community Survey 5-Year EstimateおよびBusiness Patternsデータセットから抽出した7つの経済活動の指標から成るDistressed Communities Indexに基づき、ベースライン期間を2007~11年、追跡調査期間を2012~16年として2期間の絶対変化を算出。各指標の絶対変化のスケール(0~100)で郡をランク付けし、これらランクの平均を算出して各郡の経済的繁栄の変化を決定した。平均ランクが高いほど、繁栄度の増大が大きい、または繁栄度の減少が小さいことを示す(範囲:5~92、平均±SD:50±14)。

 主要評価項目は、年齢調整心血管死亡率の平均年間変化率(APC)で、一般化線形混合効果モデルを用いて経済的繁栄の変化とAPCの変化との関連を推定した。

経済的繁栄の変化が最低三分位の郡は、心血管死亡率に変化なし

 対象とした郡における2010年の40~64歳の居住者は1億266万852人(女性51%)で、このうち、2010~17年に97万9,228人の心血管死亡が報告されていた。

 経済的繁栄の変化が最低三分位の郡では、2010~17年の年齢調整心血管死亡率に有意な変化は確認されなかった(10万人当たりの死亡[平均±SD]:114.1±47.9~116.1±52.7、APC:0.2%[95%信頼区間[CI]:-0.3~0.7])。一方、経済的繁栄の変化が中間三分位(10万人当たりの死亡:104.7±38.8~101.9±41.5、APC:-0.4%[95%CI:-0.8~-0.1])および最高三分位(10万人当たりの死亡:100.0±37.9~95.1±39.1、APC:-0.5%[95%CI:-0.9~-0.1])の郡では死亡が有意に減少した。

 ベースラインの経済的繁栄と人口統計学的および医療関連変数を調整すると、経済的繁栄の変化の平均ランク10ポイント上昇は、40~64歳の年間心血管死亡率の0.4%(95%CI:0.2~0.6)低下と有意に関連していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)