肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対するsotaterceptの皮下投与は、24週後の肺血管抵抗性を低下することが示された。NT-proBNP値の低下との関連性も認められたという。フランス・パリ・サクレー大学のMarc Humbert氏らが106例を対象に行った第II相多施設共同無作為化比較試験「PULSAR試験」の結果で、NEJM誌2021年4月1日号で発表された。PAHは、肺血管のリモデリングと細胞増殖、長期転帰は不良という特徴を有し、骨形成タンパク質経路シグナル伝達の機能不全が、遺伝性および特発性の両サブタイプに関連しているとされる。新規融合タンパク質sotaterceptは、アクチビンと増殖分化因子を結合させることで、増殖促進シグナル伝達経路と増殖抑制シグナル伝達経路のバランスを回復させる狙いで開発が進められている。
24週時点の肺血管抵抗性の変化量を比較
研究グループは、PAHの基礎治療を受けている成人106例を対象に、24週間にわたる試験を行い、sotaterceptの肺血管抵抗性に対する効果を検証した。
被験者を無作為に3群に分け、sotatercept 0.3mg/kg、同0.7mg/kg、プラセボをそれぞれ3週間ごとに皮下投与した。
主要エンドポイントは、ベースラインから24週時までの肺血管抵抗性の変化量だった。
24週後の肺血管抵抗性変化量、sotatercept 0.7mg群で有意に低下
被験者のベースライン特性は、3群で類似していた。
ベースラインから24週時までの、肺血管抵抗性の変化量の最小二乗平均群間差は、sotatercept 0.3mg群とプラセボ群では-145.8dyn・sec・cm
-5(95%信頼区間[CI]:-241.0~-50.6、p=0.003)だった。sotatercept 0.7mg群とプラセボ群では、-239.5dyn・sec・cm
-5(-329.3~-149.7、p<0.001)だった。
ベースラインから24週時までの、6分間歩行距離の変化量の最小二乗平均群間差は、sotatercept 0.3mg群とプラセボ群では29.4m(95%CI:3.8~55.0)、sotatercept 0.7mg群とプラセボ群では21.4m(-2.8~45.7)だった。
sotatercept投与群では、NT-proBNP値の低下との関連も認められた。
血液学的有害事象は、血小板減少症とヘモグロビン増加が最も多く認められた。sotatercept 0.7mg群の1例で心停止による死亡が報告された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)