重症患者への気管挿管後の主要有害イベント発生率は、45.2%と頻繁にみられることが、29ヵ国、197ヵ所の医療機関、約3,000例を対象に行った観察試験で示された。とくに多くみられたのは心血管系の不安定化で、緊急挿管を受けた患者の42.6%で発生がみられたという。イタリア・ミラノ・ビコッカ大学のVincenzo Russotto氏らによる、International Observational Study to Understand the Impact and Best Practices of Airway Management in Critically Ill Patients(INTUBE)試験の結果で、JAMA誌2021年3月23日号で発表された。重症患者への気管挿管は最も頻繁に行われる行為であると同時にリスクの高い手技でもあるが、これまで挿管時の有害イベントに関する情報は限定的であった。
挿管開始30分以内の有害イベントを評価
研究グループは、2018年10月1日~2019年7月31日に、5大陸にわたる世界29ヵ国、197ヵ所の集中治療室(ICU)や救急外来および病棟で、気管挿管を行う重症患者を連続的に被験者として前向きコホート試験を行い、2019年8月28日まで追跡した。
主要アウトカムは、挿管に伴う主要有害イベントで、挿管開始30分以内に発生した心血管不安定化(収縮期血圧65mmHg未満が1回以上、同90mmHg未満が30分超、昇圧薬の投与または増量、または15mL/kg超の輸液ボーラス投与)、重度低酸素血症(末梢酸素飽和度80%未満)、心停止のいずれか1つ以上の発生と定義した。
副次的アウトカムは、ICU死亡率などだった。
心血管系の不安定化が約43%、重度低酸素血症は約9%、心停止約3%
3,659例をスクリーニングし、うち2,964例について試験を行った。被験者の年齢中央値は63歳(IQR:49~74)で、男性は62.6%だった。気管挿管実施の主な理由は、呼吸不全(52.3%)、神経障害(30.5%)、心血管系の不安定化(9.4%)だった。
全患者について、主要アウトカムのデータを入手できた。被験者のうち、45.2%で1つ以上の主要有害イベントが発生した。そのうち高頻度で発生したのは、心血管系の不安定化で、緊急挿管を受けた患者の42.6%で観察された。次いで、重度低酸素血症(9.3%)、心停止(3.1%)が観察された。
ICU全死亡率は32.8%だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)