肥満治療において減量後の体重のリバウンドは重大な問題だが、肥満成人の減量後に運動プログラムとリラグルチドを併用することで、運動プログラムのみに比べ、1年後の体重減の差は5.4kgと、体重減維持に効果があることが示された。体脂肪率の減少幅も、運動プログラムとリラグルチドの併用群では、どちらか一方の介入群に比べて約2倍に上った。デンマーク・コペンハーゲン大学のJulie R. Lundgren氏らが、195例を対象に行った無作為化直接比較プラセボ対照試験で明らかにし、NEJM誌2021年5月6日号で発表した。
低カロリー食8週間摂取後、4群に分け体重変化を比較
試験は、2016年8月~2019年11月にかけて、非糖尿病の肥満成人(BMI:32~43)を対象に行われた。低カロリー食を8週間摂取後、被験者を無作為に4つの治療戦略群に割り付け、(1)中~高強度の運動プログラム+プラセボ(運動群)、(2)リラグルチド(3.0mg/日)+通常の活動(リラグルチド群)、(3)運動プログラム+リラグルチド(3.0mg/日)(併用群)、(4)プラセボ+通常の活動(プラセボ群)をそれぞれ1年間行った。
事前に規定した仮説に基づくエンドポイントは、ITT集団における無作為化の時点から治療終了までの体重変化(主要エンドポイント)、体脂肪率の変化(副次エンドポイント)だった。事前に規定した代謝健康関連エンドポイントと、安全性についても評価を行った。
併用群のみで糖化ヘモグロビン値、インスリン感受性、心肺持久力が改善
低カロリー食を摂取した215例のうち、8週間後に体重がベースラインから5%以上減少したのは195例だった(平均減少幅13.1kg)。
1年後に、実治療戦略を行った全群で、体重減少量がプラセボ群を上回った。プラセボ群との差は、運動群-4.1kg(95%信頼区間[CI]:-7.8~-0.4、p=0.03)、リラグルチド群-6.8kg(-10.4~-3.1、p<0.001)、併用群-9.5kg(-13.1~-5.9、p<0.001)だった。
併用群は運動群と比較して、大幅に体重減少が認められた(群間差:-5.4kg、95%CI:-9.0~-1.7、p=0.004)。一方で、リラグルチド群との比較では有意な差はみられなかった(-2.7kg、-6.3~0.8、p=0.13)。
併用群では、体脂肪率が3.9ポイント低下した。この低下幅は運動群(-1.7ポイント、95%CI:-3.2~-0.2、p=0.02)やリラグルチド群(-1.9ポイント、-3.3~-0.5、p=0.009)の約2倍だった。
糖化ヘモグロビン値やインスリン感受性、心肺持久力の改善が認められたのは、併用群のみだった。リラグルチド群では、心拍数上昇と胆石症が併用群より多く認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)