スイス・ベルン大学のMarco Valgimigli氏は、無作為化比較試験6件のメタ解析を行い、P2Y12阻害薬単独療法は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)と比較して、死亡、心筋梗塞および脳卒中のリスクは同等であるが、P2Y12阻害薬単独療法の有効性は性別によって異なり、出血リスクはDAPTより低いことを明らかにした。BMJ誌2021年6月16日号掲載の報告。
P2Y12阻害薬単独vs.DAPTの無作為化比較試験6件、2万4,096例をメタ解析
研究グループは、Ovid Medline、Embaseおよび3つのWebサイト(www.tctmd.com、www.escardio.org、www.acc.org/cardiosourceplus)を検索して、2020年7月16日までに発表された、経口抗凝固療法の適応がない患者における冠動脈血行再建術後の経口P2Y
12阻害薬単独療法とDAPTの有効性を比較(中央判定)した無作為化比較試験を特定し、個々の患者レベルでのメタ解析を行った。
主要評価項目は全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合(非劣性マージン:ハザード比[HR]:1.15)であり、安全性の主要評価項目はBARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準タイプ3または5の出血とした。
メタ解析には、6件の無作為化試験(合計2万4,096例)が組み込まれた。
死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合リスクは同等、出血リスクはP2Y12阻害薬単独が低い
主要評価項目のイベントは、per protocol集団においてP2Y
12阻害薬単独療法群283例(2.95%)、DAPT群315例(3.27%)に認められた(HR:0.93、95%信頼区間[CI]:0.79~1.09、非劣性のp=0.005、優越性のp=0.38、τ
2=0.00)。intention to treat集団ではそれぞれ303例(2.94%)、338例(3.36%)であった(0.90、0.77~1.05、優越性のp=0.18、τ
2=0.00)。
治療効果は、性別(交互作用のp=0.02)を除くすべてのサブグループで一貫していた。P2Y
12阻害薬単独療法は、女性では主要評価項目イベントのリスクを低下させるが(HR:0.64、95%CI:0.46~0.89)、男性では低下させないことが示唆された(1.00、0.83~1.19)。
BARC出血基準タイプ3または5の出血リスクは、P2Y
12阻害薬単独療法群がDAPT群より低かった(0.89% vs.1.83%、HR:0.49、95%CI:0.39~0.63、p<0.001、τ
2=0.03)。この結果は、P2Y
12阻害薬の種類(交互作用のp=0.02)を除くすべてのサブグループで一貫しており、クロピドグレルではなく新しいP2Y
12阻害薬をDAPTレジメンに使用した場合に有益性が高いことが示唆された。
(ケアネット)