米国・カリフォルニア大学のZian H. Tseng氏らは、「Postmortem Systematic Investigation of Sudden Cardiac Death study:POST SCD研究」において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性者はHIV感染の非判明者と比べて、心臓突然死(推定)および心筋線維症の発生率が高いこと、また、HIV陽性者の心臓突然死(推定)の3分の1は潜在的な薬物過剰摂取に起因していたことを明らかにした。これまで、HIV感染者における心臓突然死および不整脈による突然死の発生率について、詳細は明らかになっていなかった。NEJM誌2021年6月17日号掲載の報告。
HIV陽性の院外心停止による死亡例を全例調査
研究グループは、2011年2月1日~2016年9月16日の期間に、サンフランシスコで発生した、18~90歳のすべての院外心停止による死亡例(HIV感染判明の有無を問わず)を対象に、包括的な培検ならびに毒性学的・組織学的検査を行い、心臓突然死と不整脈による突然死の発生率を検討した。
対象期間にサンフランシスコで18~90歳のHIV陽性者の死亡は1,379例発生し、これらのうち予期せぬ死亡は610例であった。そのうち、救急医療サービス(EMS)の記録および現場調査により院外心停止と判断されたのは109例で、遺族が解剖を拒否した1例を除く108例で剖検が行われた。
HIV陽性者は、心臓突然死と心筋線維症の発生率が高い
院外心停止109例中、WHOの心臓突然死(推定)の基準を満たしたのは48例(剖検実施47例)で、そのうち半数以下(22例)は不整脈が原因であった。
2011年2月1日~2014年3月1日の期間に、HIV感染が確認されておらず心臓突然死と推定された死亡は505例発生した。
心臓突然死(推定)による死亡の発生率は、HIV感染の判明者で53.3例/10万人年、非判明者で23.7例/10万人年であった(発生率比:2.25、95%信頼区間[CI]:1.37~3.70)。不整脈による突然死の発生率は、それぞれ25.0例/10万人年、13.3例/10万人年であった(1.87、0.93~3.78)。
心臓突然死(推定)のうち、潜在的な薬物過剰摂取に起因する死亡は、HIV感染の判明者が非判明者よりも多かった(34% vs.13%)。また、HIV陽性者では、感染の非判明者よりも、組織学的に間質性心筋線維化が高度であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)