HIV-1への広域中和抗体VRC01、感染予防効果は?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/03/26

 

 ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)CD4結合部位を標的とする広域中和抗体(bnAb)の「VRC01」は、プラセボと比較してあらゆるHIV-1感染の予防効果はみられなかったが、VRC01感受性HIV-1分離株の解析から、bnAbによる予防は効果的であるとの概念は実証されたという。米国・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのLawrence Corey氏らが、VRC01のHIV-1感染予防効果を検証した多施設共同無作為化二重盲検比較試験「HVTN 704/HPTN 085試験」および「HVTN 703/HPTN 081試験」の結果を報告した。bnAbによりHIV-1感染を予防できるかどうかは、これまで知られていなかった。NEJM誌2021年3月18日号掲載の報告。

VRC01の2用量の有効性をプラセボと比較

 「HVTN 704/HPTN 085試験」は、北米南米および欧州においてリスクを有するシスジェンダー男性およびトランスジェンダーを対象に、「HVTN 703/HPTN 081試験」は、サハラ以南のアフリカにおけるリスクを有する女性を対象としてそれぞれ行われた。

 研究グループは、対象者をVRC01の10mg/kg群(低用量群)、30mg/kg群(高用量群)またはプラセボ群に無作為に割り付け、それぞれ8週ごとに計10回点滴投与し、4週ごとにHIV-1検査を実施した。また、TZM-blアッセイ法を用いて、得られた臨床分離株のVRC01 80%阻害濃度(IC80)を評価した。

 2016年4月6日~2018年10月5日に、「HVTN 704/HPTN 085試験」に計2,699例が登録された。また、2016年5月17日~2018年9月20日に、「HVTN 703/HPTN 081試験」に計1,924例が登録された。

VRC01はHIV-1感染全体として予防効果はないが、感受性株には有効

 有害事象は、各試験内の治療群間で発現件数や重症度は類似していた。

 HIV-1感染は、HVTN 704/HPTN 085試験(2,699例)において低用量群で32例、高用量群で28例、プラセボ群で38例が発生し、HVTN 703/HPTN 081試験(1,924例)においてはそれぞれ28例、19例、29例が発生した。HVTN 704/HPTN 085試験におけるHIV-1感染発生率(100人年当たり)は、VRC01統合群2.35、プラセボ群2.98であった(推定予防効果:26.6%、95%信頼区間[CI]:-11.7~51.8、p=0.15)。HVTN 703/HPTN 081試験においては、VRC01統合群2.49、プラセボ群3.10であった(8.8%、-45.1~42.6、p=0.70)。

 事前に規定した両試験の統合解析の結果、VRC01感受性分離株(IC80<1μg/mL)による感染発生率(100人年当たり)は、VRC01群0.20、プラセボ群0.86であった(推定予防効果:75.4%、95%CI:45.5~88.9)。

 感受性分離株に対する予防効果は、VRC01の各用量ならびに各試験で類似していたが、VRC01は他のHIV-1分離株の感染の予防効果は認められなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)