HIV維持療法、長時間作用型注射剤2剤併用2ヵ月ごと投与は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/18

 

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者において、長時間作用型注射剤cabotegravirと長時間作用型注射剤リルピビリンの2剤併用の8週ごと投与は、4週ごと投与と比較し有効性および安全性プロファイルは類似していることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のEdgar T. Overton氏らの「ATLAS-2M試験」で明らかとなった。cabotegravir+リルピビリン2剤併用投与については、第II相試験で8週ごと投与と4週ごと投与の有用性が示唆され、第III相試験で4週ごと投与の経口抗レトロウイルス療法に対する非劣性が検証されたことから、8週ごと投与のさらなる評価が求められていた。結果を踏まえて著者は、「HIV-1感染患者の治療選択肢として、より簡便なcabotegravir+リルピビリンの2ヵ月ごと投与の使用は支持される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年12月9日号掲載の報告。

cabotegravir+リルピビリン8週ごと投与の有効性と安全性を、4週ごと投与と比較

 ATLAS-2M試験は、HIV-1感染患者の維持療法としてcabotegravir+リルピビリン8週ごと投与(cabotegravir 600mg+リルピビリン900mg)の4週ごと投与(cabotegravir 400mg+リルピビリン600mg)に対する非劣性を検証する第IIIb相無作為化非盲検非劣性試験。現在、13ヵ国(オーストラリア、アルゼンチン、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、ロシア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、米国)で行われている。

 対象は、初回または2回目の標準的な経口レジメンを、連続して最低6ヵ月以上受けており、ウイルス学的失敗のない18歳以上のHIV-1感染患者で、ATLAS試験からの参加者はATLAS-2M試験のスクリーニング時に血漿中HIV-1 RNAが50コピー/mL未満で52週間の比較試験期を完遂した患者とした。対象患者を、cabotegravir+リルピビリンの8週ごと投与群または4週ごと投与群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
 主要エンドポイントは、48週時点のHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合(非劣性マージンは4%)であった。

48週時のHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合は非劣性

 2017年10月27日~2018年5月31日に1,149例がスクリーニングを受け、このうち1,045例が8週ごと投与群(522例)と4週ごと投与群(523例)に無作為化され治療を受けた。患者背景は、37%(391例)がATLAS試験のcabotegravir+リルピビリン4週ごと投与群から移行した患者であり、年齢中央値は42歳(四分位範囲:34~50)、女性(出生時の性別)は27%(280例)、白人は73%(763例)であった。

 48週時点のHIV-1 RNA≧50コピー/mLの患者の割合は、8週ごと投与群2%、4週ごと投与群1%、補正群間差0.8(95%信頼区間[CI]:-0.6~2.2)で、8週ごと投与は4週ごと投与に対して非劣性であることが検証された。ウイルス学的失敗(2回の測定で連続してHIV-1 RNA≧200コピー/mL)は、8週ごと投与群8例(2%)、4週ごと投与群2例(<1%)で確認された。8週ごと投与群では8例中5例(63%)、ベースラインでリルピビリンに対する耐性変異ウイルスが検出された。

 安全性プロファイルは両群で類似しており、1,045例中844例(81%)に有害事象(注射部位反応を除く)が発現した。治療に関連した死亡は確認されなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)