男性間性交渉者における無症状の直腸クラミジア感染症の治療では、ドキシサイクリンの7日間投与はアジスロマイシンの単回投与と比較して、微生物学的治癒の達成割合が高く、有害事象の発現頻度は低いことが、オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Lau氏らの検討で示された。研究の成果はNEJM誌2021年6月24日号で報告された。
オーストラリア5施設の無作為化対照比較試験
本研究は、オーストラリア3州の5つのsexual healthクリニックが参加した二重盲検無作為化対照比較試験であり、2016年8月~2019年8月の期間に実施された(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成による)。
対象は、年齢16歳以上、過去12ヵ月以内に男性との性交渉歴があり、核酸増幅検査(NAAT)で直腸クラミジアが確認された男性であった。直腸クラミジア感染症の男性の85%以上が無症状であり、オーストラリアの診療ガイドラインは有症状の感染症にはより長期の治療を推奨しているため、本試験の対象は無症状の直腸クラミジアの男性に限定された。
被験者は、ドキシサイクリン(100mg、1日2回、7日間)を投与する群またはアジスロマイシン(1g、単回)を投与する群に無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、4週の時点におけるNAATで直腸クラミジア陰性(微生物学的治癒)とされた。
微生物学的治癒:96.9% vs.76.4%、下痢が少ない
625例が登録され、ドキシサイクリン群に314例、アジスロマイシン群に311例が割り付けられた。全体の平均年齢は32.4歳であった。主要アウトカムのデータは、ドキシサイクリン群が290例(92.4%)、アジスロマイシン群は297例(95.5%)で得られた。
修正intention-to-treat集団における微生物学的治癒は、ドキシサイクリン群が290例中281例(96.9%、95%信頼区間[CI]:94.9~98.9)、アジスロマイシン群は297例中227例(76.4%、73.8~79.1)で達成され、補正後リスク差は19.9ポイントであった(14.6~25.3、p<0.001)。
有害事象(悪心、下痢、嘔吐)は、ドキシサイクリン群が98例(33.8%)、アジスロマイシン群は134例(45.1%)で報告された(リスク差:-11.3ポイント、95%CI:-19.5~-3.2、p=0.006)。このうち嘔吐(1.0% vs.1.0%)と悪心(21.7% vs.20.5%)の頻度は両群で同程度であったが、下痢(25.5% vs.39.7%、リスク差:-14.2ポイント、95%CI:-20.7~-7.8、p<0.001)がドキシサイクリン群で少なかった。
著者は、「この結果は、2015年に発表された8つの観察研究のメタ解析(微生物学的治癒率:ドキシサイクリン群99.6% vs.アジスロマイシン群82.9%)と一致していた」としている。
(医学ライター 菅野 守)