遠隔医療統合型妊産婦ケア、妊娠アウトカムを損なわず/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/20

 

 遠隔医療を統合した妊産婦ケアは、妊娠アウトカムを損なわずに対面診療を50%以上削減することが、オーストラリア・Monash HealthのKirsten R. Palmer氏らの調査で示された。この診療モデルは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行期にも、対面での対話の最小化に資する可能性があり、流行終息後の保健医療モデルにおいても考慮すべきだという。Lancet誌2021年7月3日号掲載の報告。

遠隔医療統合の影響を分割時系列分析で評価

 研究グループは、妊産婦ケアにおける遠隔医療導入の有効性と安全性を評価する目的で、Monash Health(オーストラリア、ビクトリア州の大規模医療施設で、年間の出産件数は約1万件、妊産婦診療件数は約10万件)で出産する全女性の健康データを定期的に収集し、分割時系列分析を行った(特定の研究助成は受けていない)。

 この試験では、2020年3月23日以降に、低リスクおよび高リスク診療モデルを用いて、妊産婦ケアに遠隔医療を統合した場合の影響を評価した。2020年3月23日から1ヵ月間の導入期間を設定し、その後2020年4月20日~7月26日までに実施された遠隔医療統合型ケアと、2018年1月1日~2020年3月22日までに実施された従来型ケアを比較した。

 主要評価項目は、胎児発育不全、妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病の検出とそのアウトカムとした。

高リスクモデルの統合型ケアで早産が減少、他のアウトカムに差はない

 従来型ケア期間(2018年1月1日~2020年3月22日)に、2万31人(平均年齢31.29歳)が出産し、遠隔医療統合型ケア期間(2020年4月20日~7月26日)には、2,292人(31.61歳)が出産した(年齢差のp=0.03)。統合型ケア期間に実施された2万154件の妊産婦診療のうち、1万731件(53%)が遠隔医療による受診であり、対面診療は9,423件(47%)と半数以下に減少した。

 全体として、統合型ケア期間と従来型ケア期間との間には、胎児発育不全(低リスク診療モデルでの出生時体重<3パーセンタイル:統合型ケア期間2% vs.従来型ケア期間2%[p=0.72]、高リスク診療モデルでの出生時体重<3パーセンタイル:5% vs.5%、[p=0.50])、死産(1% vs.1%[p=0.79]、2% vs.2%[p=0.70])、妊娠高血圧腎症を合併した妊娠(3% vs.3%[p=0.70]、9% vs.7%[p=0.15])、妊娠糖尿病(22% vs.22%[p=0.89]、30% vs.26%[p=0.06])の発生について有意な差は認められなかった。

 分割時系列分析では、高リスク診療モデルの女性で早産(週当たりの発生率の変化量:-0.68%、95%信頼区間[CI]:-1.37~-0.002、p=0.049)が、統合型ケアによって有意に減少した。一方、その他のアウトカムについては、統合型ケアと従来型ケアには、低リスク診療モデルおよび高リスク診療モデルの双方において有意差はみられなかった。

 著者は、「これらの知見は、遠隔医療による妊産婦ケアは従来型のケアに比べ、アウトカムが同等または改善される可能性が高いことを示しており、今後、これを検証するとともに、より長期間の研究やCOVID-19の流行終息後の研究も進める必要がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)