世界の高血圧患者数、30年で2倍に/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2021/09/03

 

 1990~2019年における高血圧有病率、治療率およびコントロール率の改善は、国・地域によって大きく異なり、一部の中所得国がほとんどの高所得国を上回っている現状が明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らが、約200の国・地域の研究1,201件、計1億400万人のデータの解析結果を報告した。著者は、「高所得国だけではなく低所得国や中所得国においても、高血圧の1次予防と治療およびコントロールの強化を介して高血圧有病率を減少させる二元的アプローチ(dual approach)は達成可能である」と強調している。Lancet誌オンライン版2021年8月24日号掲載の報告。

1億400万人のデータを解析

 非感染性疾患の危険因子に関する国際共同疫学研究グループ(NCD Risk Factor Collaboration:NCD-RisC)は、1990~2019年に184の国・地域で実施され、血圧測定ならびに高血圧治療に関するデータが得られる一般住民を対象とした1,201件の研究を特定し、30~79歳の1億400万人のデータを解析した。

 主要評価項目は、高血圧の有病率、診断率(高血圧と診断されたことがあると報告した人の割合)、治療率(降圧薬を服用している人の割合)、コントロール率(血圧が140/90mmHg未満にコントロールされている人の割合)で、ベイズ階層モデルを用いて推定した。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬を服用していることと定義した。

世界全体で2019年の高血圧有病率は約30%、診断率は50~60%、治療率は40~50%

 世界全体で30~79歳の高血圧の年齢標準化有病率は、1990年が男女とも32%、2019年が男性34%、女性32%と安定していたのに対して、高血圧患者数は1990年の男性3億1,700万人、女性3億3,100万人から、2019年には男性6億5,200万人、女性6億2,600万人と2倍になった。

 2019年の年齢標準化有病率は、男女ともカナダ、ペルーで最も低く、女性は台湾、韓国、日本、およびスウェーデン、スペイン、英国を含む西ヨーロッパの国で、男性はエリトリア、バングラデシュ、エチオピア、ソロモン諸島などの低・中所得国で低かった。2019年の高血圧有病率が50%を超えたのは、男性で9ヵ国(パラグアイ、ハンガリー、ポーランド、アルゼンチン、リトアニア、ルーマニア、ベラルーシ、クロアチア、タジキスタン)、女性で2ヵ国(パラグアイ、ツバル)であった。

 2019年の高血圧患者において、診断率は男性49%、女性59%、治療率はそれぞれ38%、47%、コントロール率は18%、23%であった。

 2019年の治療率およびコントロール率は、韓国、カナダ、アイスランドで最も高く(治療率>70%、コントロール率>50%)、次いで米国、コスタリカ、ドイツ、ポルトガル、台湾であった。ネパール、インドネシア、サハラ以南のアフリカおよびオセアニアの一部の国では、治療率が男性で20%未満、女性で25%未満であった。これらの国の男性および女性、ならびに北アフリカ、中央・南アジア、東ヨーロッパの一部の国の男性では、コントロール率が10%未満であった。1990年以降、ほとんどの国で治療率およびコントロール率は向上したが、サハラ以南のアフリカとオセアニアのほとんどの国では変化はわずかであった。治療率およびコントロール率の改善が最も大きかったのは、高所得国、中央ヨーロッパ、ならびにコスタリカ、台湾、カザフスタン、南アフリカ、ブラジル、チリ、トルコ、イランなどの中・高所得国であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)