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異常気温、世界中で死亡リスクに影響/Lancet

米国・ワシントン大学のKatrin G Burkart氏らは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、欧州中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ECMWF)が作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値と死亡との関連について解析。異常低温や異常高温への曝露は多様な死因による死亡リスクに影響し、ほとんどの地域では低温の影響が大きいが、気温が高い地域では低温の影響をはるかに上回る高温の影響がみられることを明らかにした。著者は、「高温リスクの曝露が着実に増加していることは、健康への懸念が高まっている」とまとめている。気温の高低と死亡率および罹患率の増加との関連はこれまでにも報告されているが、疾病負担の包括的な評価は行われていなかった。Lancet誌2021年8月21日号掲載の報告。
気候変動監視のERA5再解析データを用い、気温と死亡の関連を解析
研究グループは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、パート1として、ECMWFが作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値を用い、死亡との関連を解析した。ベイジアンメタ回帰の2次スプラインを用い、1日平均気温と23の平均気温帯に従い、個人の死因176疾患に関して死因別相対リスクをモデル化した後、日間死亡率データが入手可能な国について、死因別および全気温に起因する負担を算出した。また、パート1で得られた死因別相対リスクを世界のすべての場所に適用した。
曝露-反応曲線と日平均気温を組み合わせ、「世界の疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study)」による疾病負担に基づき、1990~2019年の死因別負担を算出した。
異常低温・異常高温による死者は2019年では169万人
パート1では、1980年1月1日~2016年12月31日の、9ヵ国(ブラジル、チリ、中国、コロンビア、グアテマラ、メキシコ、ニュージーランド、南アフリカ、米国)における6,490万人の死亡データを用いた。評価対象となった死因176疾患のうち、有意差の基準を満たした17の死因が解析対象となった。虚血性心疾患、脳卒中、心筋症/心筋炎、高血圧性心疾患、糖尿病、慢性腎臓病、下気道感染症、慢性閉塞性肺疾患は、日平均気温とJ字型の関連性を示したが、外因(例えば、殺人、自殺、溺死、および災害やその他の不慮の事故に関連するもの)リスクは、気温とともに単調に増加した。
理論的な最小リスク曝露レベルは、基本的な死因の構成の機能として、場所と年によって異なっていた。非最適気温に関する推定値は、ブラジルにおける死亡数7.98人/10万人(95%不確実性区間[UI]:7.10~8.85)、人口寄与割合(PAF)1.2%(95%UI:1.1~1.4)から、中国における死亡数35.1人/10万人(95%UI:29.9~40.3)、PA F4.7%(95%UI:4.3~5.1)の範囲であった。
2019年には、データが得られたすべての国で、低温に関連した死亡率が高温による死亡率を上回った。低温の影響が最も顕著だったのは、中国(PAFは4.3%[95%UI:3.9~4.7]、寄与率は10万人当たり32.0人[95%UI:27.2~36.8])、およびニュージーランド(それぞれ3.4%[95%UI:2.9~3.9]、26.4人[95%UI:22.1~30.2])、高温の影響が最も顕著だったのは、中国(0.4%[95%UI:0.3~0.6]、3.25人[95%UI:2.39~4.24])、およびブラジル(0.4%[95%UI:0.3~0.5]、2.71人[95%UI:2.15~3.37])であった。
これらの結果を世界のすべての国に適用した場合、2019年に世界で非最適気温に起因する死者は169万人と推定された。暑さに起因する負担が最も高かったのは、南・東南アジア、サハラ以南のアフリカ、北アフリカ・中東、寒さに起因する負担が最も高かったのは東・中央ヨーロッパ、中央アジアであった。
(ケアネット)
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コメンテーター : 有馬 久富( ありま ひさとみ ) 氏
福岡大学医学部 衛生・公衆衛生学 教授
J-CLEAR会員