エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/09/10

 

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、糖尿病の有無を問わず左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に低下させることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のStefan D. Anker氏らが行った、世界23ヵ国622施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「EMPEROR-Preserved試験」の結果、示された。SGLT2阻害薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の心不全による入院リスクを低下させるが、HFpEF患者における有効性については不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月27日号掲載の報告。

HFpEF患者約6,000例で、エンパグリフロジン上乗せの有効性をプラセボと比較

 研究グループは、NYHA心機能分類クラスII~IVの慢性心不全で、左室駆出率が>40%、NT-proBNPが300pg/mL以上(ベースラインで心房細動を有する患者の場合は900pg/mL以上)の18歳以上の患者を、標準治療に加えて、エンパグリフロジン(1日1回10mg)またはプラセボの投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、地域、糖尿病の有無、推定糸球体濾過量(eGFR)(<60mL/分/1.73m2 vs.≧60mL/分/1.73m2)、左心室駆出率(<50% vs.≧50%)で層別化した。

 主要評価項目は、心血管死または心不全による入院の複合、副次評価項目は、初回および再発を含むすべての心不全による入院、eGFRのベースラインからの低下率であった。

 2017年3月27日~2020年4月13日の期間に1万1,583例がスクリーニングされ、5,988例が無作為に割り付けられた(エンパグリフロジン群2,997例、プラセボ群2,991例)。

入院の複合リスク21%低下

 追跡期間中央値26.2ヵ月において、主要評価項目のイベントはエンパグリフロジン群13.8%(415/2,997例)、プラセボ群17.1%(511/2,991例)に発生した。ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.69~0.90、p<0.001)であり、エンパグリフロジン群で有意に発生リスクが低下した。

 主要評価項目の有効性は、主に心不全による入院リスクの低下と関連していた(心不全による入院[HR:0.79、95%CI:0.60~0.83]、心血管死[0.91、0.76~1.09])。また、エンパグリフロジンの有効性は、糖尿病の有無にかかわらず一貫していた(ベースラインで糖尿病あり[HR:0.79、95%CI:0.67~0.94]、糖尿病なし[0.78、0.64~0.95])。

 主要副次評価項目である心不全による入院の総数は、プラセボ群と比較してエンパグリフロジン群で有意に低下した(エンパグリフロジン群407例、プラセボ群541例、[HR:0.73、95%CI:0.61~0.88]、p<0.001)。

 安全性解析対象集団において、重篤な有害事象の発現率はエンパグリフロジン群で47.9%(1,436/2,996例)、プラセボ群で51.6%(1,543/2,989例)であった。エンパグリフロジン群では単純性尿路・性器感染症および低血圧がより多く見られた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)