心血管疾患の1次予防において固定用量併用療法戦略は、心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術および心血管死を大幅に低減する。カナダ・マックマスター大学のPhilip Joseph氏らPolypill Trialists' Collaborationが、個人被験者データのメタ解析を行い報告した。示されたベネフィットは、心血管代謝のリスク因子に関係なく一貫性が認められたという。無作為化試験において、固定用量併用療法(またはポリピル)は1次予防における心血管疾患の複合アウトカムを低減することが示されている。しかしながら、アスピリンを含むべきか否か、特異的アウトカムへの効果、および主要サブグループでの効果などは明らかになっていなかった。Lancet誌オンライン版2021年8月29日号掲載の報告。
メタ解析で固定用量併用療法vs.対照を評価
研究グループは、心血管疾患の1次予防集団について固定用量併用療法戦略vs.対照戦略を検討した大規模無作為化試験(被験者1,000例以上で追跡期間2年以上)に参加した個人被験者データを用いてメタ解析を行った。2種類以上の降圧薬+スタチン(±アスピリン)の固定用量併用療法戦略と対照戦略(プラセボまたは通常ケア)を比較した試験を適格とし包含した。
主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中または動脈血行再建術のいずれかの初発までの期間とした。追加で、個別の心血管アウトカム、全死因死亡をアウトカムに包含した。
アウトカムは、固定用量併用療法戦略群のアスピリン併用有無別で層別化したグループでも評価。効果サイズは、リスク因子に基づく規定サブグループで算出し、Kaplan-Meier生存曲線およびCox比例ハザード回帰モデルを用いて戦略を比較した。
アスピリン有無問わず、個別・複合アウトカムが有意に低減
解析には3つの大規模無作為化試験(IPS-3、HOPE-3、PolyIran)が包含され、総計被験者数は1万8,162例であった。平均年齢は63.0歳(SD 7.1)、9,038例(49.8%)が女性であり、集団の推定10年心血管疾患リスクは17.7%(SD 8.7)であった。
追跡期間中央値5年において、主要アウトカムの発生は、固定用量併用療法戦略群276例(3.0%)、対照群445例(4.9%)だった(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.53~0.73、p<0.0001)。主要アウトカムの個別アウトカムについても低減が認められ、HR(95%CI)は心筋梗塞0.52(0.38~0.70)、血行再建術0.54(0.36~0.80)、脳卒中0.59(0.45~0.78)、心血管死0.65(0.52~0.81)であった。
主要アウトカムおよびその個別アウトカムの有意な低減は、アスピリンの有無を問わず固定用量併用療法戦略群の解析で観察されたが、アスピリンを含む戦略群でより低減効果は大きかった。
治療効果は、脂質値や血圧値が異なっていても、また糖尿病、喫煙、肥満の有無を問わず同等であった。
まれではあったが消化官出血の発現頻度が、アスピリンを有する固定用量併用療法戦略群で対照群よりもわずかに高かった(19例[0.4%]vs.11例[0.2%]、p=0.15)。出血性脳卒中(10例[0.2%]vs.15例[0.3%])、致死的出血(2例[<0.1%]vs.4例[0.1%])、消化性潰瘍疾患(32例[0.7%]vs.34例[0.8%])の頻度は固定用量併用療法戦略群で低く、サブグループにおいて両群間に有意差はなかった。めまいの発現頻度が固定用量併用療法戦略群で、有意に高かった(1,060例[11.7%]vs.834例[9.2%]、p<0.0001)。
(ケアネット)