インターベンションを要する無症候性重度狭窄患者に対し、頚動脈ステント留置術(CAS)と頚動脈内膜剥離術(CEA)の有効性およびリスクを比較したところ、長期5年の手技非関連脳卒中リスク、手技関連の後遺障害を伴う脳卒中や死亡リスク共に同等であることが示された。英国・オックスフォード大学のAlison Halliday氏らが、33ヵ国・130病院を通じて行った国際多施設共同無作為化比較試験「ACST-2」の結果を報告した。重度狭窄を有するが直近の脳卒中や一過性脳虚血の既往のない無症候性の患者では、CASまたはCEAのいずれもが有効で長期脳卒中リスクを低減可能なことが報告されている。しかしながら最近の全国規模のレジストリデータで、いずれの手技共に後遺障害を伴う脳卒中や死亡に1%程度の手技的リスクをもたらしていることが示され、大規模な無作為化試験を行い長期的な影響の比較のエビデンスを得る必要性が提言されていた。Lancet誌2021年9月18日号掲載の報告。
片側性・両側性重度頚動脈狭窄で手術を要する患者を対象に無作為化試験
ACST-2試験の被験者は、他のすべての試験で判断されたインターベンションを要する重度狭窄患者で、片側性または両側性に重度頚動脈狭窄があり、医師・患者共に頚動脈手術の施行に同意していた場合に適格とされたが、CASとCEAの選択権は実質的になかった。被験者は無作為に2群にCAS群またはCEA群に無作為に割り付けられ、1ヵ月後、その後は毎年の追跡を平均5年間受けた。
術後30日以内に発生したイベントを、手技関連イベントとし、ITT集団を対象に表解析による手技関連ハザードなどの解析を行った。手技非関連脳卒中については、Kaplan-Meier法やlog-rank検定法を用いて解析した。
5年手技非関連脳卒中の発生率は同等
2008年1月15日~2020年12月31日に、被験者3,625例をCAS群(1,811例)とCEA群(1,814例)に無作為に割り付けた。コンプライアンス、薬物治療はいずれも良好で、平均追跡期間は5年だった。
全体で、手技関連の後遺障害を伴う脳卒中や死亡は1%(CAS群15例、CEA群18例)、手技関連の後遺障害を伴わない脳卒中は2%(それぞれ48例、29例)だった。
Kaplan-Meier法による5年手技非関連脳卒中の推定発生率は、致死的または後遺障害を伴う脳卒中については両群共2.5%、あらゆる脳卒中は同CAS群5.3%、CEA群4.5%だった(率比[RR]:1.16、95%信頼区間[CI]:0.86~1.57、p=0.33)。
手技非関連脳卒中の発生に関するすべてのCAS群vs.CEA群試験の率比は、症候性・無症候性の患者で同等だった(全体RR:1.11、95%CI:0.91~1.32、p=0.21)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)