早期パーキンソン病(PD)と診断された患者において、イノシンはプラセボと比較して臨床的疾患進行率に差は認められず、早期PDに対する治療法としてイノシンの使用を支持しない。米国・マサチューセッツ総合病院神経変性疾患研究所のMichael A. Schwarzschild氏らParkinson Study Group SURE-PD3 Investigatorsが、無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SURE-PD3試験」の結果を報告した。尿酸値の上昇は、臨床的には痛風などの結晶性疾患、心血管障害、代謝障害と関連している一方で、前向き疫学研究では血清尿酸値の上昇がPDのリスク低下要因となることや、早期PDでは血清尿酸値高値が進行を遅らせることなどが報告され、尿酸塩の代謝前駆体であるイノシンによる疾患修飾治療の可能性が追求されていた。JAMA誌2021年9月14日号掲載の報告。
血清尿酸値5.8mg/dL未満のPD患者を対象に、イノシン群とプラセボ群を比較
研究グループは、2016年8月~2017年12月に、米国の58施設において、ドパミン作動薬をまだ必要としないPD患者で、線条体ドパミントランスポーターが減少しており、血清尿酸値5.8mg/dL未満の患者298例を、イノシン群とプラセボ群に1:1の割合に無作為化した。投与期間は最長2年間で、投与量は1日最大3g(500mgカプセル2個を1日3回)とし、血清尿酸値が7.1~8.0mg/dLとなるよう盲検下で漸増した。なお、腎結石のリスク低下のため、2018年1月からは1日最大投与量は2g/日とした。
主要評価項目は、運動障害疾患学会パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)のパートI~IIIの合計スコア(範囲:0~236、スコアが高いほど障害が大きい)の年間変化で、臨床的に意味のある最小差は6.3ポイントとした。副次評価項目は、血清尿酸値、有害事象、およびMDS-UPDRSの各パート、QOL、認知機能、線条体ドパミントランスポーター結合能などの有効性である。
なお、本試験は、予定されていた中間解析において、事前に規定された無益性基準を満たしたため、早期終了となった。
有効性に差はなし、安全性ではイノシン群で腎結石が多い
無作為化された298例中273例(92%)(女性49%、平均年齢63歳)が試験を完了した。MDS-UPDRSスコアの変化量は、イノシン群が11.1ポイント/年(95%信頼区間[CI]:9.7~12.6)、プラセボ群が9.9ポイント/年(95%CI:8.4~11.3)で、両群の差は1.26ポイント/年(95%CI:-0.59~3.11、p=0.18)であり、臨床的疾患進行率に有意差は認められなかった。
イノシン群では血清尿酸値が持続的に2.03mg/dL上昇した(ベースラインの4.6mg/dLから44%上昇)のに対し、プラセボ群では0.01mg/dLの上昇であった(群間差:2.02mg/dL、95%CI:1.85~2.19mg/dL、p<0.001)。ドパミントランスポーター結合能の低下を含む有効性の副次評価項目については、有意差は認められなかった。
安全性については、イノシン群ではプラセボ群と比較して重篤な有害事象の発現頻度は低かったが(100患者年当たり7.4 vs.13.1)、腎結石の発生が多く認められた(100患者年当たり7.0 vs.1.4)。
(ケアネット)