慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪で入院した患者において、通常治療に積極的な肺塞栓症(PE)の診断戦略を追加しても、通常治療のみと比較し複合的な健康アウトカムの有意な改善は認められないことが、スペイン・Universidad de AlcalaのDavid Jimenez氏らが同国18施設にて実施した、多施設共同無作為化非盲検試験「Significance of Pulmonary Embolism in COPD Exacerbations trial:SLICE試験」の結果、示された。PEはCOPDの増悪を呈した患者に多くみられることが報告されているが、増悪により入院したCOPD患者においてPEを積極的に検査することで臨床アウトカムが改善されるかどうかを評価した臨床試験はこれまでなかった。JAMA誌2021年10月5日号掲載の報告。
通常治療と、無作為化後12時間以内のPE診断追加を比較
研究グループは2014年9月~2020年7月に、増悪のために入院したCOPD患者746例を、通常治療+積極的なPE診断戦略(無作為化後12時間以内にDダイマー検査→陽性の場合は肺血管造影CT検査)を行う介入群(370例)と、通常治療のみの対照群(367例)に、1対1の割合で無作為に割り付け、3ヵ月間追跡調査した(最終2020年11月)。
主要評価項目は、無作為化後90日以内の非致死的な新規/再発症候性静脈血栓塞栓症(VTE)、COPDによる再入院または死亡の複合エンドポイントであった。副次評価項目は主要評価項目の各イベントとし、有害事象についても評価した。
アウトカムの改善には結び付かず
無作為化された746例のうち、無作為化時点で抗凝固薬を投与されていた4例、同意撤回3例、および誤って無作為化された2例を除く737例(98.8%)がintention-to-treat解析対象集団となった(平均年齢70歳、女性195例[26%])。
主要評価項目のイベントは、介入群で110例(29.7%)、対照群で107例(29.2%)に認められた(絶対リスク差:0.5%[95%信頼区間[CI]:-6.2~7.3]、相対リスク:1.02[95%CI:0.82~1.28]、p=0.86)。介入群の対照群に対する無作為化後90日以内の複合アウトカム発生に関するハザード比は1.0(95%CI:0.8~1.3、p=0.82)であった。
無作為化後90日以内の非致死的な新規/再発症候性VTEは、介入群で2例(0.5%)、対照群で9例(2.5%)(絶対リスク差:-2.0%[95%CI:-4.3~0.1]、相対リスク:0.22[95%CI:0.05~1.01])に発生した。COPD増悪による再入院についても、94例(25.4%)vs.84例(22.9%)で両群に差はなかった(2.5%[-3.9~8.9]、1.11[0.86~1.43])。90日死亡率は、6.2% vs.7.9%であった(-1.7%[-5.7~2.3]、0.79[0.46~1.33])。
有害事象については、大出血は介入群で3例(0.8%)、対照群で3例(0.8%)に発生した(相対リスク:1.0、95%CI:0.2~4.9、p=0.99)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)