65歳以上の心房細動患者に対し、リバーロキサバンはアピキサバンに比べて、主要な虚血性または出血性イベントリスクを有意に増大することが、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが米国のメディケア加入者約58万例について行った後ろ向きコホート試験の結果、示された。リバーロキサバンとアピキサバンは、心房細動患者の虚血性脳卒中予防のために最も頻繁に処方される経口抗凝固薬だが、有効性の比較については不明であった。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。
脳卒中、全身性塞栓症、脳内出血、その他頭蓋内出血などの発生を両群で比較
研究グループは、65歳以上のメディケア加入者のコンピュータ登録および医療費請求の情報を用いて、後ろ向きコホート試験を行った。2013年1月~2018年11月に、心房細動でリバーロキサバンまたはアピキサバンの治療を開始した総計58万1,451例を、2018年11月30日まで最長4年間追跡した。
主要アウトカムは、主要な虚血性イベント(脳卒中、全身性塞栓症)と出血性イベント(脳内出血、その他頭蓋内出血、致死的頭蓋外出血)の複合とした。副次アウトカムは、非致死的頭蓋外出血と総死亡(追跡期間中の致死的虚血性/出血性イベントまたはその他の原因による死亡)だった。
発生率、ハザード比(HR)および率差(RD)を、ベースラインの併存疾患について傾向スコアの逆数を重み付けした解析法(IPTW)で補正して算出し比較検討した。
低用量服用者でも、リバーロキサバン群で主要アウトカム発生1.3倍
被験者の平均年齢は77.0歳、女性は50.2%、リバーロキサバンまたはアピキサバンの低用量服用者は23.1%で、延べ追跡期間は47万4,605人年だった(追跡期間中央値:174日[IQR:62~397])。
補正後主要アウトカム発生率は、リバーロキサバン群の16.1件/1,000人年に対し、アピキサバン群は13.4件/1,000人年と低率だった(RD:2.7[95%信頼区間[CI]:1.9~3.5]、HR:1.18[1.12~1.24])。
また、リバーロキサバン群はアピキサバン群よりも、主要虚血性イベント(8.6 vs.7.6件/1,000人年、RD:1.1[95%CI:0.5~1.7]、HR:1.12[95%CI:1.04~1.20])、主要出血性イベント(7.5 vs.5.9件/1,000人年、RD:1.6[1.1~2.1]、HR:1.26[1.16~1.36])の発生率がいずれも高率だった。致死的頭蓋外出血は1.4 vs.1.0件/1,000人年(RD:0.4[0.2~0.7]、HR:1.41[1.18~1.70])だった。
非致死的頭蓋外出血(39.7 vs.18.5/1,000人年、RD:21.1[95%CI:20.0~22.3]、HR:2.07[95%CI:1.99~2.15])、致死的虚血性/出血性イベント(4.5 vs.3.3/1,000人年、RD:1.2[0.8~1.6]、HR:1.34[1.21~1.48])、総死亡(44.2 vs.41.0/1,000人年、RD:3.1[1.8~4.5]、HR:1.06[1.02~1.09])のいずれの発生率も、リバーロキサバン群がアピキサバン群に比べ高率だった。
なお、低用量服用者(27.4 vs.21.0/1,000人年、RD:6.4[95%CI:4.1~8.7]、HR:1.28[1.16~1.40])と標準用量服用者(13.2 vs.11.4/1,000人年、RD:1.8[1.0~2.6]、HR:1.13[1.06~1.21])を別にみた場合も、主要アウトカム発生はリバーロキサバン群がアピキサバン群に比べ高率だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)