新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンを2回接種後、日数経過によりワクチン有効性は低下し、その低下速度はワクチンの種類によって異なることが示された。スウェーデン・Umea大学のPeter Nordstrom氏らが、84万人超のワクチン接種者と、同数のマッチングコントロールについて後ろ向き全住民コホート試験を行い明らかにした。ChAdOx1 nCoV-19(Oxford-AstraZeneca製)、mRNA-1273(Moderna製)、BNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の2回接種後、症状の程度を問わない新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に対するワクチン有効性は、BNT162b2は4~6ヵ月で47%に減少、7ヵ月後には有意な有効性が認められなかったが、mRNA-1273では6ヵ月以降も59%を維持していた。入院や死亡などを伴う重症COVID-19に対する予防効果は、いずれかのワクチンとも2回接種後、比較的長期にわたり維持されてはいたが、4ヵ月以降は64%と明らかな低下が認められ、著者は「今回の結果は、エビデンスに基づく3回目のブースター接種に関する根拠を強化するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年2月4日号掲載の報告。
感染予防と重症化予防効果の減少について検証
研究グループは、スウェーデンの全国登録名簿を基に、COVID-19ワクチン、ChAdOx1 nCoV-19、mRNA-1273、BNT162b2のいずれかの2回接種者と、ワクチン未接種者のマッチングコントロール試験を行い、2021年10月4日まで追跡した。
評価アウトカムは2つで、(1)2021年1月12日~10月4日の重症度を問わないあらゆるSARS-CoV-2感染、(2)2021年3月15日~9月28日の重症COVID-19(COVID-19による入院またはSARS-CoV-2感染確定後の30日全死因死亡で定義)とした。
ChAdOx1 nCoV-19ワクチン、接種後4ヵ月超の予防効果認められず
2020年12月28日~2021年10月4日に、COVID-19ワクチン2回接種者84万2,974例と、同数のマッチングコントロールについて分析を行った。
あらゆる重症度のSARS-CoV-2感染に対するワクチン有効性は、BNT162b2では接種から日数の経過に従い低下し、接種後15~30日で92%(95%信頼区間[CI]:92~93、p<0.001)、121~180日で47%(39~55、p<0.001)、211日以降で23%(同:-2~41、p=0.07)だった。
mRNA-1273の同有効性の低下はやや緩やかで、接種後15~30日で96%(95%CI:94~97、p<0.001)、181日以降で59%(18~79、p=0.012)だった。ChAdOx1 nCoV-19とmRNA-1273のそれぞれ1回接種群でも同有効性の低下はやや緩やかで、接種後15~30日で89%(79~94、p<0.001)、121日以降で66%(41~80、p<0.001)だった。
対照的にChAdOx1 nCoV-19については、接種後15~30日のワクチン有効性は68%(95%CI:52~79、p<0.001)で、121日以降は有効性を検出できなかった(有効性:-19%、95%CI:-98~28、p=0.49)。
重症COVID-19に対する全種ワクチンの有効性は、接種後15~30日は89%(95%CI:82~93、p<0.001)であったものから、121日以降は64%(同:44~77、p<0.001)に低下していた。
また、全体として女性よりも男性のほうがワクチンの有効性は低く、若年者よりも高齢者のほうがワクチン有効性が低いとのエビデンスも認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)