深部静脈血栓症(DVT)の診断において、検査前臨床的確率とDダイマーを組み合わせた戦略は、超音波検査の実施回数を減少させつつDVTのリスクが低い患者群を特定できることが、カナダ・マックマスター大学のClive Kearon氏らが実施した前向き試験「Designer D-Dimer Deep vein thrombosis(4D)試験」で示された。これまでのコホート研究で、検査前臨床的確率が低いまたはWellsスコアが低くDダイマー陰性の患者はDVTを除外できることの安全性が示唆されていた。BMJ誌2022年2月15日号掲載の報告。
低確率+1,000ng/mL未満、中確率+500ng/mL未満はDVTを除外
研究グループは、カナダの大学病院10施設の救急診療部または外来を受診した、DVTの症状または兆候を有する患者を前向きに登録し、3ヵ月間追跡した。
登録時、Wellsスコアを用いてDVT検査前臨床的確率を低確率(スコア:-2~0)、中確率(1、2)、高確率(3以上)に分類するとともにDダイマーを測定し、低確率でDダイマー1,000ng/mL未満、または中確率でDダイマー500ng/mL未満の患者は追加検査なしでDVTを除外できると判断。その他のすべての患者には超音波検査を実施した。最初の超音波検査が陰性で、低~中確率かつDダイマー>3,000ng/mLまたは高確率かつDダイマー>1,500ng/mLの患者には、1週間後に再度超音波検査を行った。超音波検査でDVTが認められた患者には、抗凝固療法を実施した。
主要評価項目は、3ヵ月時の症候性静脈血栓塞栓症とした。
4D診断アルゴリズムで、超音波検査の必要性がほぼ半減
2014年4月~2020年3月の期間に1,508例の登録と解析が行われた。1,508例中173例(11.5%)が今回の4D診断アルゴリズムによりDVTと診断された(168例は来院日の超音波検査で、5例は1週間後の再検査で確認)。DVTと診断されず抗凝固療法を受けなかった1,275例のうち、8例(0.6%、95%信頼区間[CI]:0.3~1.2)が、追跡期間中に静脈血栓塞栓症を発症した。
従来のDVT診断戦略と比較すると、今回のアルゴリズムでは超音波検査の平均回数が患者1例当たり1.36回から0.72回に減少し、差は-0.64回(95%CI:-0.68~-0.60)で、相対的な47%の減少に相当した。
なお著者は、入院患者、抗凝固療法中の患者、妊婦、肺塞栓症疑いの患者などが除外されていることなどを研究の限界として挙げている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)