心臓手術後の急性腎障害、基礎代謝パネルで予測可能か/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/22

 

 心臓手術を受ける患者において、周術期の基礎代謝パネル検査値に基づく予測モデルは、術後72時間以内および14日以内の中等症~重症急性腎障害(AKI)について、良好な予測精度を有することが、米国・クリーブランドクリニックのSevag Demirjian氏らによる検討で示された。AKIの治療は、タイムリーな診断に基づけば効果的である一方、腎障害後の血清クレアチニン値の上昇の遅れが治療開始を遅らせてしまう可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、リスク予測ツールの利用が臨床アウトカムを改善するかどうかを確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2022年3月8日号掲載の報告。

患者5万8,526例をベースに、多変数予測モデルを開発・検証

 研究グループは、心臓手術後のAKIに関する予測モデルの開発と検証のための検討を行った。2000年1月~2019年12月に米国大学医療センター1施設で心臓手術を受けた成人患者を後ろ向きに観察したコホート(5万8,526例)をベースに、多変数予測モデルを開発。その後、同モデルについて米国の地域病院3施設からの外部コホート(4,734例)で検証した(最終フォローアップは2020年1月15日)。

 血清クレアチニン値の周術期変化と心臓手術後の最初の代謝パネルから術後血中尿素窒素、血清ナトリウム、カリウム、重炭酸塩およびアルブミン値を用いてモデルを作成。主要評価項目は、手術後72時間以内および14日以内のKidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)に基づく中等症~重症AKIと透析予測モデルを必要としたAKIの、受信者動作特性曲線下領域(AUC)およびキャリブレーション測定値とした。

術後72時間以内・14日以内の中等症~重症AKIの予測良好

 モデル開発コホート5万8,526例(年齢中央値66[IQR:56~74]歳、男性3万9,173例[67%]、白人種5万1,503例[91%])において、心臓手術後72時間以内の中等症~重症AKIは2,674例(4.6%)、透析を要したAKIは868例(1.48%)であり、14日間以内はそれぞれ3,156例(5.4%)、1,018例(1.74%)が認められた。

 手術終了から初回代謝パネルまでの時間中央値は10(IQR:7~12)時間であった。

 開発コホートにおいて代謝パネルベースのモデルは、中等症~重症AKIについて術後72時間以内(AUC:0.876、95%信頼区間[CI]:0.869~0.883)、14日以内(0.854、0.850~0.861)ともに優れた予測識別能を示した。透析を要したAKIについても、同72時間以内(0.916、0.907~0.926)、14日以内(0.900、0.889~0.909)と優れた予測識別能を示した。

 検証コホート4,734例に(年齢中央値67[IQR:60~74]歳、男性3,361例[71%]、白人種3,977例[87%]おいて、作成モデルは、術後中等症~重症AKIについて72時間以内のAUCは0.860(95%CI:0.838~0.882)、14日以内のAUCは0.842(0.820~0.865)を示した。透析を要したAKIについては、術後72時間以内のAUCは0.879(95%CI:0.840~0.918)、14日以内のAUCは0.873(0.836~0.910)を示した。

 Spiegelhalter z検定で評価したキャリブレーションはp>0.05で、開発および検証モデルいずれも適切なキャリブレーションであることが示唆された。

(ケアネット)

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コメンテーター : 今中 和人( いまなか かずひと ) 氏

医療法人朗源会 大隈病院

J-CLEAR推薦コメンテーター