重症急性腎障害、RRT実施遅延で死亡リスク増大/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/04/15

 

 重症急性腎障害(Kidney Disease: Improving Global Outcomes[KDIGO]ステージ3)で尿量減少72時間超または血清尿素窒素濃度112mg/dL超を有し、即時の緊急腎代替療法(RRT)を要する重篤な合併症を認めない患者においては、RRTの開始を長期遅延する治療戦略はベネフィットをもたらすことなく潜在的な有害事象と関連する。フランス・APHP Hopital AvicenneのStephane Gaudry氏らが、278例を対象に行った多施設共同非盲検無作為化試験の結果を報告した。重篤な合併症を認めない重症急性腎障害患者に対してRRTの開始を延期することは、安全であり医療機器使用の最適化を可能にするとされているが、リスクを伴わない延期の猶予期間については明確にはなっていなかった。Lancet誌2021年4月3日号掲載の報告。

フランス39ヵ所のICUで試験

 研究グループは、待機戦略のさらなる開始延期は、通常の待機戦略と比べてRRTフリー期間が長くなるとの仮説を検証するため、フランス39ヵ所の集中治療室(ICU)を通じて試験を行った。

 危篤状態の重症急性腎障害(KDIGOステージ3)患者について、尿量減少72時間超、または血清尿素窒素濃度が112mg/dL超になるまで観察。その後、患者を無作為に2群に割り付け、一方には即時RRTを開始(待機戦略群)、もう一方にはRRTの必須徴候(顕著な高カリウム血症、代謝性アシドーシス、肺水腫)または血清尿素窒素濃度が140mg/dLに達するまで待機してRRTを開始した(長期待機戦略群)。

 主要アウトカムは、無作為化から28日後までの生存日数およびRRTフリー日数で、ITT解析で評価した。

60日死亡リスク、長期待機戦略群は待機戦略群の1.65倍

 2018年5月7日~2019年10月11日に5,336例が評価を受け、そのうち278例が無作為化された。待機戦略群は137例、長期待機戦略群は141例だった。

 RRTフリー日数中央値は、待機戦略群12日(IQR:0~25)、長期待機戦略群10日(0~24)で、両群間に有意差はなかった(p=0.93)。

 多変量解析の結果、長期待機戦略群の待機戦略群に対する60日時点の死亡ハザード比は、1.65(95%信頼区間:1.09~2.50、p=0.018)だった。

 なお、急性腎障害やRRT関連と考えられる合併症数は、両群間で差はなかった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)