ペットのハムスターはSARS-CoV-2に自然感染し、ハムスター間で伝播してヒトへの感染につながる可能性がある。中国・香港大学のHui-Ling Yen氏らは、ペットショップ店員のSARS-CoV-2感染事例について調査し、遺伝学的および疫学的な結果から、ハムスターからヒトへの感染が1回以上あったことが強く示唆され、その後のヒトへの感染につながったことを明らかにした。ヒトからペット動物を含む他の哺乳類へのSARS-CoV-2感染は報告されているが、養殖ミンクを除き、これら感染動物からヒトへの感染が持続的なヒト-ヒト感染に至るという証拠はこれまでなかった。著者は、「SARS-CoV-2デルタ変異株に感染したハムスターの輸入が局地的な流行の原因である可能性が高い。今回の調査結果は、ペット動物の取引に対する認識、監視、ならびに適切な検疫と管理政策の必要性を強調している」とまとめている。Lancet誌2022年3月12日号掲載の報告。
ペットショップ等の動物を検査、関連COVID-19患者のSARS-CoV-2ゲノムを解析
研究グループは、香港のペットショップおよび動物卸売業者の倉庫で、異なるケージにいる異なる動物種から口腔および糞便スワブを無作為に採取するとともに、追跡調査としてハムスターから血液と口腔スワブを採取した。口腔スワブは定量的RT-PCR(RT-qPCR)によりSARS-CoV-2検査を行い、血液検体はサロゲートウイルス中和試験およびプラーク減少中和試験により血清学的検査を行った。SARS-CoV-2陽性検体は、次世代シークエンサーによりウイルスゲノム配列を確定し、系統解析を行った。
また、ペットショップと疫学的に関連するCOVID-19患者と、その患者らに続きSARS-CoV-2デルタ変異株に感染していると確認されたその地域の症例から、鼻腔スワブまたは唾液を採取し、香港政府が提供する日常診療の一環としてRT-qPCR検査を行い、ウイルスの遺伝子配列を決定した。
ゴールデンハムスターの5~6割がSARS-CoV-2陽性、ヒトへの感染を確認
ペットショップのゴールデンハムスター16匹中8匹(50%)、そのペットショップに関連する倉庫のゴールデンハムスター12匹中7匹(58%)が、RT-qPCRまたは血清検査でSARS-CoV-2陽性と判明した。ドワーフハムスター(75匹)、ウサギ(246匹)、モルモット(66匹)、チンチラ(116匹)およびマウス(2匹)は、いずれもSARS-CoV-2感染が確認されなかった。
ヒトおよびハムスターの感染例から推定されたSARS-CoV-2ウイルスのゲノムは、すべてデルタ変異株(AY.127)に属し、この集団発生以前には地域で流行していなかったものであった。
ハムスターから得られたウイルスゲノムは系統発生学的に、ある配列多様性と関連していた。系統樹の年代測定から、これらのハムスターへの感染は2021年10月14日(95%信頼区間:9月15日~11月9日)ごろに発生したことが示唆された。ハムスターからヒトへのSARS-CoV-2の人獣共通感染事象が複数検出され、その後のヒトからヒトへの感染につながった。
(ケアネット)