臨床試験の有害事象の伝達において、グラフ化(可視化)は強力なツールであり従来の頻度表に代わる他の視点を提供し、臨床試験の報告書で有害事象の可視化の使用が増加することよって、明確な情報の提示とより有益な解釈が可能となる。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRachel Phillips氏らが、有害事象を視覚的に提示するための推奨事項を作成するコンセンサス研究の結果を報告した。有害事象のデータは複雑であるが、可視化は安全性プロファイルを明確にし、潜在的な副作用の特定に役立つ可能性がある。著者は、「デシジョンツリーは可視化の選択を補助するが、最終的には統計学者および臨床試験チームがそのデータと目的に最適な可視化を決定しなければならない」と述べている。BMJ誌2022年5月16日号掲載の報告。
治験に携わる統計学者、医療経済学者、グラフィックデザイナーらでコンセンサス会議
コンセンサスグループは、UK Clinical Research Collaborationに登録されている15の臨床試験ユニットから統計学者20人と、学術的な公衆衛生部門に所属する医療経済学者1人、業界の統計学者1人、BMJ誌のマルチメディアチームの一員であるデータグラフィックデザイナー1人、医師2人から構成された。
統計手法の方法論的なレビューにより、コンセンサスグループメンバーが推奨する可視化法を特定し、3回にわたる会議で可視化の推奨に関するコンセンサス(有効投票数の60%以上)が得られた。
メンバーは、合意された枠組みに対する候補となる可視化を再検討し、また批評的に評価して、それぞれの可視化を承認するかどうか投票した。スコアが閾値をわずかに下回った場合(50~60%)は、さらなる議論のため再考され、コンセンサスが得られるまで再投票が行われた。
推奨されるグラフ化は10種類、アウトカムの種類や状況に応じて選択
28種類の可視化法が検討され、そのうち10種類が、研究者が主要な研究結果を発表する際に検討するよう推奨された。
提示する可視化法の選択は、アウトカムの種類(たとえば、頭痛の発生の有無など追跡期間中に経験したイベントの発生数[2値変数]、治療開始から頭痛発生までの時間[time-to-event]、血球数の個々の結果[連続変数]など)や、状況(有害事象のプロファイル全体を評価するか、特定のイベントまたは関心のあるイベントに関する直接的なメッセージを伝えるか)に依存する。すなわち、有害事象のプロファイルを示す場合は、アウトカムの種類が2値変数ではドットプロット、積み上げ棒グラフ、カウントでは棒グラフ、連続変数では散布図マトリックスが推奨され、time-to-eventでは推奨される方法なし。1つのイベントについて示す場合は、アウトカムの種類がtime-to-eventではKaplan-Meierプロット、生存率(Survival ratio)プロット、平均累積関数プロットが、連続変数では折れ線グラフ、バイオリンプロットおよびカーネル密度プロットが推奨された。
また、どの可視化法を使用するかの決定に役立つデシジョンツリーが提示され、各可視化法については、プロットの説明、解釈、潜在的な限界、標準的な統計ソフトで実施可能なコード等がまとめられている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)