うつ病やPTSDが深刻なネパールの元少年兵

提供元:ケアネット

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公開日:2008/08/26

 

戦争や武力紛争で、戦闘への参加を強いられた少年兵経験者には、特別の精神保健的な介入が必要とされるが、徴兵されなかった一般の少年との精神保健面の違いに関する研究は十分ではない。エモリー大学(米国・ジョージア州アトランタ市)のBrandon A. Kohrt氏らはネパールにおける調査の結果、「元少年兵の精神保健面の問題は、徴兵されなかった少年に比べて、より重症である」と報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。

少年兵と徴兵未経験者を141例ずつ選定し比較




ネパールで2007年3月から4月にかけて、元少年兵と徴兵されなかった少年をそれぞれ141例選定し、年齢、性別、教育水準、民族性を合わせた横断的コホート研究を行い、精神保健面を比較した。

主要評価項目は、うつ病症状は「Depression Self Rating Scale」、不安障害は「Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders」、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は「Child PTSD Symptom Scale」、一般的な心理的障害は「Strength and Difficulties Questionnaire」、日常的動作は「Function Impairment tool」、心的外傷要因への曝露は、情動障害と統合失調症に関する「PTSD Traumatic Event Checklist of the Kiddie Schedule」で評価した。

PTSDは男子よりも女子で深刻




研究参加時の平均年齢は15.75歳、少年兵徴用時の年齢は5歳~16歳だった。すべての参加者に、少なくとも1種類の心的外傷があった。

元少年兵の症状別では、うつ病が75例(53.2%)、不安障害が65例(46.1%)、PTSDが78例(55.3%)、心理的障害が55例(39.0%)、機能障害が88例(62.4%)だった。心的外傷要因への曝露および他の要素で補正すると、うつ病(オッズ比:2.41、95%信頼区間:1.31~4.44)、PTSD(女子)(6.80、2.16~21.58)、PTSD(男子)(3.81、1.06~13.73)に有意な関連が認められた。一般的な心理的障害(2.08、0.86~5.02)、不安(1.63、0.77~3.45)、機能障害(1.34、0.84~2.14)との関連は有意ではなかった。

Kohrt氏は「ネパールの元少年兵は、徴兵されなかった少年と比べて精神衛生的な問題はより重症で、うつ病とPTSD(特に女子)の形で心に焼きついている」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)