妊娠糖尿病の診断基準として低めの血糖値を用いても、高めの血糖値を用いた場合と比較し、在胎不当過大(LGA)児を出産するリスクは低下しないことを、ニュージーランド・オークランド大学のCaroline A. Crowther氏らが無作為化試験「Gestational Diabetes Mellitus Trial of Diagnostic Detection Thresholds:GEMS試験」の結果、報告した。妊娠糖尿病の治療は母子の健康を改善するが、その診断基準ははっきりしないままであった。NEJM誌2022年8月18日号掲載の報告。
妊婦を低め/高めの基準値群に無作為化し、LGA児出生を比較
研究グループは、2015年4月~2020年8月の期間に、妊娠24~32週の妊婦を、妊娠糖尿病の診断基準として低めの血糖値を用いる群(低基準値群、2,022例)と高めの血糖値を用いる群(高基準値群、2,039例)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
低基準値群は、75g経口ブドウ糖負荷検査(OGTT)において、(1)空腹時血糖値≧92mg/dL(5.1mmol/L)、(2)1時間値≧180mg/dL(10.0mmol/L)、(3)2時間値≧153mg/dL(8.5mmol/L)のいずれかを満たした場合、高基準値群は、(1)空腹時血糖値≧99mg/dL(5.5mmol/L)、(2)2時間値≧162mg/dL(9.0mmol/L)のいずれかを満たした場合とした。
主要評価項目は、LGA児(出生時体重がFenton-WHO成長曲線の>90パーセンタイルと定義)の出生、副次評価項目は母子の健康状態などであった。
低基準値群で妊娠糖尿病の診断・治療は高頻度も、LGA児出生は高基準値群と同等
妊娠糖尿病と診断された妊婦は、低基準値群で2,022例中310例(15.3%)、高基準値群で2,039例中124例(6.1%)であった。出生後、退院時まで追跡調査が完了した新生児は、低基準値群で2,019例、高基準値群で2,031例であり、このうちLGA児はそれぞれ178例(8.8%)および181例(8.9%)であった(補正後相対リスク:0.98、95%信頼区間[CI]:0.80~1.19、p=0.82)。
分娩誘発、医療サービスの利用、薬剤の使用、および新生児低血糖は、高基準値群と比較して低基準値群で高頻度であったが、その他の副次評価項目の結果は両群で類似しており、有害事象について実質的な群間差は確認されなかった。
75gOGTTの検査値が、低基準値と高基準値の間に位置していた妊婦のうち、妊娠糖尿病の治療を受けた195例は、治療を受けなかった178例と比較し、LGA児が少ないなど母子の健康への有益性が認められた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
Crowther CA, et al. N Engl J Med. 2022;387:587-598.