ジグザクラインや光の点滅を見たりする前兆を伴う片頭痛は、心筋梗塞を含む虚血性の脳卒中や狭心症など血管性イベントのリスク増加と関連しているとされるが、生物学的メカニズムは明らかではない。その関連について、Framinghamリスクスコアに基づく血管リスクの状態による変化(女性対象)を調べていたブリガム&ウィメンズ病院(米国・ボストン)予防医学部門のTobias Kurth氏らは、「血管リスクの状態によって関連は異なる。片頭痛と血管リスクの情報は、心血管イベントの将来予測に寄与するようだ」と報告した。BMJ誌2008年8月7日号掲載より。
2万7,519例の女性を対象に前向きコホート研究
米国Women's health studyと題する前向きコホート研究は、基線で心血管疾患ではなく、Framinghamリスクスコアと片頭痛状態に関する情報が入手可能だった2万7,519例の女性が参加して行われた。
参加者は、Framinghamリスクスコアに基づき冠動脈性心疾患の10年リスクについて、「≦1%」「2~4%」「5~9%」「≧10%」の各グループに階層化された。
主要アウトカムは、「主な心血管疾患イベント(非致死的心筋梗塞、非致死性の虚血性脳卒中、虚血性心血管疾患による死亡)」、「心筋梗塞」、「虚血性脳卒中」の各発症までの時間。
基線で片頭痛を報告した女性は、3,577例(13.0%)で、そのうち1,418例(39.6%)が前兆を伴う片頭痛であったことを報告した。
Framinghamリスクスコアの血管リスク指標は有効!?
11.9年の追跡調査の間、心血管疾患イベントは697例だった。
片頭痛のない女性と比較して、前兆を伴う片頭痛がある女性のハザード比(年齢補正済)は、「主な心血管疾患イベント」1.93(95%信頼区間:1.45~2.56)、「虚血性脳卒中」1.80(1.16~2.79)、「心筋梗塞」1.94(1.27~2.95)であった。
Framinghamリスクスコアによって階層化した場合は、前兆を伴う片頭痛と「主要な心血管疾患イベント」との間の関連は、「≦1%」グループで最も強かった。
片頭痛のない女性と比較して、「≦1%」グループで前兆を伴う片頭痛を報告した女性のハザード比(年齢補正済)は、「虚血性脳卒中」3.88(1.87~8.08)、「心筋梗塞」1.29(0.40~4.21)だった。
「≧10%」グループで前兆を伴う片頭痛をもつ女性のハザード比は、「虚血性脳卒中」1.00(0.24~4.14)、「心筋梗塞」3.34(1.50~7.46)だった。
前兆のない片頭痛をもつ女性については、Framinghamリスクスコアの各グループごとに見ても、虚血性脳卒中、心筋梗塞ともリスクは高くなかった。
Kurth氏は、「前兆を伴う片頭痛と心血管疾患との間の関連は、血管リスクの状態によって異なる。片頭痛と血管リスク状態の病歴情報は、女性において特異的に、将来の心血管疾患イベントの高いリスクを知る手がかりとなるといえそうだ」と結論している。