疾患リスクが進行した幅広い慢性腎臓病の患者において、エンパグリフロジンはプラセボと比較し、リスクの進行や心血管系による死亡の低減に結び付くことが示された。英国・オックスフォード大学のWilliam G. Herrington氏らが、広範囲の疾患進行リスクを有する慢性腎臓病患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験「EMPA-KIDNEY試験」の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2022年11月4日号掲載の報告。
対プラセボで、腎臓病進行と心血管死の複合アウトカムを評価
EMPA-KIDNEY試験では、推算糸球体濾過量(eGFR)が20mL/分/1.73m
2~45mL/分/1.73m
2未満、またはeGFR 45mL/分/1.73m
2~90mL/分/1.73m
2未満で尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)が200(mg/g・CRE)以上の慢性腎臓病患者を対象とした。
研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはエンパグリフロジン(10mg 1日1回)を、もう一方にはプラセボを投与した。
主要アウトカムは、腎臓病の進行(末期腎不全、eGFRが持続的に10mL/分/1.73m
2未満、eGFRがベースラインから40%以上持続的に低下、腎臓病による死亡)または心血管系による死亡の複合アウトカムだった。
入院リスクもエンパグリフロジン群が有意に低率
合計6,609例が無作為化を受けた。追跡期間中央値2.0年の間に、主要アウトカムの発生は、エンパグリフロジン群3,304例中432例(13.1%)、プラセボ群3,305例中558例(16.9%)だった(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.64~0.82、p<0.001)。
この結果は、糖尿病の有無にかかわらず、またeGFR値によるサブグループ別でも一貫していた。
原因を問わない入院の発生率も、エンパグリフロジン群がプラセボ群より低率だった(HR:0.86、95%CI:0.78~0.95、p=0.003)。一方で、心不全による入院または心血管系による死亡の複合アウトカム発生率(エンパグリフロジン群4.0%、プラセボ群4.6%)、および全死因死亡の発生率(4.5%、5.1%)は両群間で有意差はみられなかった。
重篤な有害イベントの発現頻度は、両群で同程度だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)