軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)(主にテルミサルタン40mg/日)による治療は疾患重症度に対する有益性がないことが、オーストラリア・シドニー大学のMeg J. Jardine氏らがインドとオーストラリアの17施設で実施したプラグマティックなアダプティブデザインの無作為化比較試験「CLARITY試験(Controlled evaLuation of Angiotensin Receptor blockers for covid-19 respIraTorY disease)」の結果、示された。これまで、ARB未治療の患者を対象とした5件の無作為化臨床試験において、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の主要評価項目に対する中立的効果が報告され、1件では副次評価項目である死亡に対し高用量テルミサルタン(80mgを1日2回14日間投与)の有益性が報告されていた。著者は本試験の結果について、「対象のほとんどがベースラインで酸素吸入を必要としない患者であったため」と述べたうえで、「現在進行中の試験では、より重症患者におけるARBの効果を評価できる可能性があり、ベイジアン・アダプティブ・デザインを用いることで、臨床診療に役立つ確定的かつ効率的な回答が得られる」と述べている。BMJ誌2022年11月16日号掲載の報告。
標準治療+ARB(主にテルミサルタン)vs.標準治療のみ(±プラセボ)
研究グループは、ARBによる治療歴がなく、検査による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の確定診断を受け、COVID-19の管理のために入院した18歳以上の患者を、標準治療に加えてARBまたは対照薬を投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回28日間経口投与した。なお、ARBは、インドではテルミサルタン(開始用量40mg/日)、オーストラリアでは担当医の選択とし、対照薬はインドではプラセボ(二重盲検試験)、オーストラリアでは標準治療のみ(非盲検試験)であった。
主要評価項目は、14日目における修正WHO臨床進行スケール(WHO-CPS)(1:退院・活動制限なし~7:死亡)によるCOVID-19の疾患重症度、副次評価項目は28日目のWHO-CPS、死亡率、集中治療室入室、呼吸不全であった。
14日目の疾患重症度は両群で同じ
2020年5月3日~2021年11月13日の期間に、2,930例がスクリーニングを受け、787例がARB群(393例、うち388例[98.7%]はテルミサルタン40mg/日)または対照群(394例)に無作為に割り付けられた。787例中、778例(98.9%)がインドから、9例(1.1%)がオーストラリアからの参加であった。
主要評価項目である14日目のWHO-CPS中央値は、ARB群(384例)で1(四分位範囲[IQR]:1~1)、プラセボ群(382例)で1(1~1)であった(補正後オッズ比[OR]:1.51、95%信用区間[CrI]:1.02~2.23、オッズ比>1の確率〔Pr[OR>1]〕:0.98)。
28日目のWHO-CPSは、両群間でほとんど差は認められなかった(補正後OR:1.02、95%CrI:0.55~1.87、Pr[OR>1]:0.53)。
本試験は、事前に設定された無益性の基準を満たし中止となった。
(ケアネット)