主観的な認知機能低下を自覚する高齢者において、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)、運動またはその併用はいずれも、エピソード記憶ならびに遂行機能を改善しなかった。米国・ワシントン大学のEric J. Lenze氏らが、米国の2施設(ワシントン大学セントルイス校、カリフォルニア大学サンディエゴ校)で実施した2×2要因無作為化臨床試験「Mindfulness, Education, and Exercise(MEDEX)試験」の結果を報告した。エピソード記憶と遂行機能は、加齢とともに低下する認知機能の本質的な側面であり、この低下は生活習慣への介入で改善する可能性が示唆されていた。著者は、「今回の知見は、主観的な認知機能低下を自覚する高齢者の認知機能改善のためにこれらの介入を行うことを支持しない」とまとめている。JAMA誌2022年12月13日号掲載の報告。
マインドフルネス低減法、運動、両者の併用の認知機能への影響を検証
研究グループは、認知症ではないが主観的な認知機能低下を自覚する65~84歳の高齢者585例を、MBSR群(150例)、運動群(138例)、MBSR+運動併用群(144例)、または健康教育群(対照群、153例)に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けた(登録期間:2015年11月19日~2019年1月23日、最終追跡日:2020年3月16日)。
MBSR群では、18ヵ月間、月1回MBSR教室が開催され、自宅で毎日60分間を目標に瞑想を行った。運動群では、6ヵ月間は週2回、その後12ヵ月間は週1回教室が開催され、それぞれ1.5時間運動(有酸素運動、筋トレ、機能訓練)するとともに、自宅で週300分以上(教室での運動の時間も含めて)運動することが目標とされた。併用群はこれらMBSRと運動の両方を行い、対照群ではグループでの教育のみを行った。
主要アウトカムは2つで、6ヵ月時ならびに18ヵ月時の神経心理学的検査によるエピソード記憶と遂行機能とし、平均[SD]を0[1]に標準化(スコアが高いほど認知機能良好)して評価した。副次アウトカムは5つが報告され、機能的MRIによる海馬体積、背外側前頭前野の厚さと表面積、機能的認知能力、自己申告による認知機能の懸念であった。
いずれもエピソード記憶と遂行機能の改善には至らず
無作為化された585例(平均年齢71.5歳、女性424例[72.5%])のうち、568例(97.1%)が6ヵ月間、475例(81.2%)が18ヵ月間の試験を完遂した。
6ヵ月時点で、MBSRまたは運動のいずれも、エピソード記憶に対する有意な有効性は認められなかった。記憶複合スコアは、MBSRあり0.44 vs.なし0.48(平均群間差:-0.04、95%信頼区間[CI]:-0.15~0.07、p=0.50)、運動あり0.49 vs.なし0.42(0.07、-0.04~0.17、p=0.23)であった。
また、遂行機能に対する有効性も認められなかった。遂行機能複合スコアはMBSRあり0.39 vs.なし0.31(平均群間差:0.08、95%CI:-0.02~0.19、p=0.12)、運動あり0.39 vs.なし0.32(0.07、-0.03~0.18、p=0.17)だった。18ヵ月時点においても同様に、介入の有効性は確認されなかった。
6ヵ月時点において、MBSRと運動の間に有意な相互作用は認められなかった。また、副次アウトカムも、対照群と比較していずれの介入群も有意な改善は示されなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)