CAR-T ide-cel、再発・難治性多発性骨髄腫への第III相試験結果(KarMMa-3)/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/03/01

 

 2~4レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるイデカブタゲン ビクルユーセル(idecabtagene vicleucel:ide-cel)は標準治療と比較して、無増悪生存期間を約7ヵ月有意に延長するとともに深い奏効をもたらし、安全性プロファイルは先行研究と一致し新たな安全性シグナルは認められないことが、スペイン・Clinica Universidad de NavarraのPaula Rodriguez-Otero氏らが実施した「KarMMa-3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年2月10日号で報告された。

3分の2が3クラス抵抗性の無作為化第III相試験

 KarMMa-3は、日本を含む12ヵ国49施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2019年5月~2022年4月の期間に患者の登録が行われた(2seventy bioとCelgene[Bristol-Myers Squibbの関連会社]の助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、多発性骨髄腫と診断され、3クラスの薬剤(ダラツムマブ、免疫調整薬、プロテアーゼ阻害薬)を含む前治療(それぞれ2サイクル以上)を2~4レジメン施行され、最後の治療の最終投与日から60日以内に増悪が認められた患者であった。

 被験者は、ide-celを投与する群(用量範囲:CAR陽性細胞150×106~450×106)または標準治療を受ける群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。標準治療は、担当医の裁量で、次の5つのレジメンから1つが選択された。ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン、イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン、エロツズマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン。

 386例が登録され、ide-cel群に254例(年齢中央値63歳、男性61%)、標準治療群に132例(63歳、60%)が割り付けられた。66%が3クラス抵抗性で、95%はダラツムマブ抵抗性であった。

全生存データは不十分

 追跡期間中央値18.6ヵ月の時点における無増悪生存期間中央値(主要評価項目)は、標準治療群が4.4ヵ月であったのに対しide-cel群は13.3ヵ月と、有意に延長した(増悪または死亡のハザード比[HR]:0.49、95%信頼区間[CI]:0.38~0.65、p<0.001)。6ヵ月無増悪生存率は、ide-cel群が73%、標準治療群は40%、1年無増悪生存率はそれぞれ55%、30%だった。

 奏効割合(部分奏効以上)は、標準治療群の42%に比しide-cel群は71%であり、有意差が認められた(オッズ比[OR]:3.47、95%CI:2.24~5.39、p<0.001)。完全奏効または厳格な完全奏効の割合は、ide-cel群で高かった(39% vs.5%)。また、奏効までの期間中央値は、ide-cel群が2.9ヵ月、標準治療群は2.1ヵ月で、奏効期間中央値はそれぞれ14.8ヵ月、9.7ヵ月だった。全生存のデータは不十分であった。

 Grade3/4の有害事象は、ide-cel群が93%、標準治療群は75%で、Grade5はそれぞれ14%、6%で発現した。最も頻度の高い血液毒性は、好中球減少(ide-cel群78%、標準治療群44%)、貧血(66%、36%)、血小板減少(54%、29%)であり、消化器毒性では、悪心(45%、27%)、下痢(34%、24%)の頻度が高かった。

 ide-cel群では、サイトカイン放出症候群が88%(197/225例)で発現し、このうちGrade3以上は5%(11例)であった。また、神経毒性は15%(34例)で認められ、3%(7例)がGrade3だった。

 著者は、「複数の患者サブグループで無増悪生存期間が延長し、奏効率が改善したことを考慮すると、ide-celは、選択肢が少なく治療困難な再発・難治性多発性骨髄腫の患者に有益である可能性がある。また、本研究の知見は、生存アウトカムが不良な3クラス抵抗性の患者における本薬の使用を支持するものと考えられる」としている。

(医学ライター 菅野 守)