脳内出血の症状発現から数時間以内に、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムとの組み合わせで早期に集中的に降圧治療を行うケアバンドルは、通常ケアと比較して、機能的アウトカムを有意に改善し、重篤な有害事象が少ないことが、中国・四川大学のLu Ma氏らが実施した「INTERACT3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年5月25日号で報告された。
10ヵ国121病院のstepped wedgeクラスター無作為化試験
INTERACT3試験は、早期に集中的に血圧を下げるプロトコールと、高血糖、発熱、血液凝固障害の管理アルゴリズムを組み込んだ目標指向型ケアバンドルの有効性の評価を目的に、10ヵ国(低・中所得国9、高所得国1)の121病院で実施された実践的なエンドポイント盲検stepped wedgeクラスター無作為化試験であり、2017年5月27日~2021年7月8日に参加施設の無作為化が、2017年12月12日~2021年12月31日に患者のスクリーニングが行われた(英国保健省などの助成を受けた)。
参加施設は、ケアバンドルと通常ケアを行う時期が異なる3つのシークエンスに無作為に割り付けられた。各シークエンスは、4つの治療期間から成り、3シークエンスとも1期目は通常ケアが行われ、ケアバンドルはシークエンス1が2~4期目、シークエンス2は3~4期目、シークエンス3は4期目に行われた。
ケアバンドルのプロトコールには、収縮期血圧の早期厳格な降圧(目標値:治療開始から1時間以内に140mmHg未満)、厳格な血糖コントロール(目標値:糖尿病がない場合6.1~7.8mmol/L、糖尿病がある場合7.8~10.0mmol/L)、解熱治療(目標体温:治療開始から1時間以内に37.5°C以下)、ワルファリンによる抗凝固療法(目標値:国際標準化比<1.5)の開始から1時間以内の迅速解除が含まれ、これらの値が異常な場合に実施された。
主要アウトカムは、マスクされた研究者による6ヵ月後の修正Rankin尺度(mRS、0[症状なし]~6[死亡]点)で評価した機能回復であった。
6ヵ月以内の死亡、7日以内の退院も良好
7,036例(平均年齢62.0[SD 12.6]歳、女性36.0%、中国人90.3%)が登録され、ケアバンドル群に3,221例、通常ケア群に3,815例が割り付けられ、主要アウトカムのデータはそれぞれ2,892例と3,363例で得られた。
6ヵ月後のmRSスコアは、通常ケア群に比べケアバンドル群で良好で、不良な機能的アウトカムの可能性が有意に低かった(共通オッズ比[OR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.76~0.97、p=0.015)。
ケアバンドル群におけるmRSスコアの良好な変化は、国や患者(年齢、性別など)による追加補正を含む感度分析でも、全般に一致して認められた(共通OR:0.84、95%CI:0.73~0.97、p=0.017)。
6ヵ月の時点での死亡(p=0.015)および治療開始から7日以内の退院(p=0.034)も、ケアバンドル群で優れ、健康関連QOL(EQ-5D-3Lで評価)ドメインのうち痛み/不快感(p=0.0016)と不安/ふさぎ込み(p=0.046)が、ケアバンドル群で良好だった。
また、通常ケア群に比べケアバンドル群の患者は、重篤な有害事象の頻度が低かった(16.0% vs.20.1%、p=0.0098)。
著者は、「このアプローチは、収縮期血圧140mmHg未満を目標とする早期集中血圧管理を基本戦略とする簡便な目標指向型のケアバンドルプロトコールであり、急性期脳内出血患者の機能的アウトカムを安全かつ効果的に改善した」とまとめ、「この重篤な疾患に対する積極的な管理の一環として、医療施設は本プロトコールを取り入れるべきと考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)