心停止後に体外非虚血性灌流を用いて蘇生させた心臓の移植は、脳死後冷保存された心臓を用いた標準移植と比較して、移植後6ヵ月時のリスク補正後生存率に関して非劣性であることが示された。米国・デューク大学医療センターのJacob N. Schroder氏らが多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。心停止ドナーから得られた心臓の移植の有効性と安全性を、脳死ドナーから得られた心臓の移植と比較したデータには限りがあった。NEJM誌2023年6月8日号掲載の報告。
移植用臓器灌流保存装置で保存した心停止ドナーの心臓を移植
研究グループは、米国内15ヵ所の移植センターの待機リストに載っていた成人の心臓移植候補者を、心停止群と脳死群に3対1の割合で無作為に割り付けた。心停止群では、UNOS(United Network for Organ Sharing)の優先順位に従い、心停止ドナーからの心臓または脳死ドナーからの心臓のどちらか先に適合するほうを移植できることとし、脳死群では脳死ドナーからの心臓のみを移植した。脳死ドナーからの心臓は、脳死後に従来の冷却浸漬保存法で保存され、心停止ドナーからの心臓は心停止後に移植用臓器灌流保存装置(Organ Care System Heart、TransMedics製)を用いて保存された。
主要有効性エンドポイントは、as-treated集団におけるリスク補正後の移植後6ヵ月時生存率とし、心停止群と脳死群を比較した。主要安全性エンドポイントは、移植後30日時点の移植心臓に関連する重篤な有害事象とした。
6ヵ月時生存率、心停止ドナーの心臓移植群94%、脳死ドナーの心臓移植群90%
2019年12月~2020年11月に、計297例が心停止群(226例)または脳死群(71例)に割り付けられた。全体で180例が移植を受け、割り付けにかかわらず心停止ドナーの心臓移植例が90例、脳死ドナーの心臓移植例が90例であった。このうち、それぞれ80例および86例、計166例がas-treated解析に組み込まれた。
as-treated集団におけるリスク補正後6ヵ月時生存率は、心停止ドナーの心臓移植群で94%(95%信頼区間[CI]:88~99)、脳死ドナーの心臓移植群で90%(84~97)、両群の最小二乗平均差は-3ポイント(90%CI:-10~3、非劣性のp<0.001、非劣性マージン20ポイント)であった。
移植後30日時点における移植心臓に関連する重篤な有害事象の発現頻度(患者1例当たりの平均件数)に、両群で実質的な差はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)