慢性硬膜下血腫患者において、デキサメタゾンによる治療は穿頭ドレナージと比較し機能的アウトカムに関して非劣性は示されず、合併症の発現頻度や追加手術を要する患者の割合が高かった。オランダ・Amphia HospitalのIshita P. Miah氏らが、医師主導、評価者盲検の多施設共同無作為化非盲検非劣性試験の結果を報告した。慢性硬膜下血腫の治療において、外科的除去を伴わないグルココルチコイドの役割は不明であった。NEJM誌2023年6月15日号掲載の報告。
3ヵ月時の機能的アウトカムをmRSスコアで比較
研究グループは、CTで新たに診断された18歳以上の症候性慢性硬膜下血腫患者を、デキサメタゾン群および手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
デキサメタゾン群では、1~4日目に8mgを12時間ごと、その後3日ごとに半量ずつ漸減して0.5mg/日を投与する19日間の漸減コースにて、経口投与または経口投与が不可能な場合は静脈内投与した。手術群では、無作為化後7日以内に標準的な穿頭ドレナージを行った。
主要エンドポイントは、無作為化後3ヵ月時の機能的アウトカムで、修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[症状なし]~6[死亡])で評価した。手術に対するデキサメタゾンの非劣性マージンは、手術群よりデキサメタゾン群でmRSスコアが低いことの補正後共通オッズ比(OR)の95%信頼区間(CI)の下限が0.9以上と定義した。
副次エンドポイントは、症状の重症度に関するMarkwalder Grading Scale(MGS)および拡張グラスゴー転帰尺度(GOS-E)のスコアであった。
デキサメタゾン群の手術群に対する非劣性は示されず
本試験は、サンプルサイズ420例を対象とすることが計画されたが、2016年9月~2021年2月に1,039例がスクリーニングされ、このうち無作為化された252例を対象とした中間解析の後、デキサメタゾンの安全性およびアウトカムに関する懸念のため、データ安全性モニタリング委員会の勧告により早期終了となった。
252例(デキサメタゾン群127例、手術群125例)の患者背景は、平均年齢74歳、77%が男性であった。両群の患者背景は、入院時のmRSスコアを除き類似していた(mRSスコアが4の患者の割合がデキサメタゾン群57.5%、手術群33.6%)。
主要エンドポイントである無作為化後3ヵ月時のmRSスコア0(症状なし)および1(機能障害なし)の割合は、デキサメタゾン群でスコア0が17.5%、スコア1が26.2%、手術群でそれぞれ35.5%および33.1%であった。手術群よりデキサメタゾン群でmRSスコアが低いことの補正後共通ORは0.55(95%CI:0.34~0.90)であり、デキサメタゾンの手術に対する非劣性は認められなかった。MGSおよびGOS-Eスコアも、主解析の結果と同様であった。
合併症はデキサメタゾン群で59%、手術群で32%に発現し、追加手術はそれぞれ55%および6%に行われた。
(ケアネット)