更年期のホルモン補充療法の使用経験は、それが55歳以下の時点であっても、あらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病の発症と有意な関連があり、投与期間が長くなるほど関連性が増強することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のNelsan Pourhadi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年6月28日号で報告された。
デンマークのコホート内症例対照研究
研究グループは、デンマークにおける更年期ホルモン療法と認知症との関連を、ホルモン療法の種類、投与期間、年齢別に評価する目的で、全国規模のコホート内症例対照研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。
2000年の時点で50~60歳のデンマーク人女性で、認知症の既往歴がなく、更年期ホルモン療法の禁忌もない集団から、2000~18年の期間に認知症を発症した5,589例(年齢中央値70歳[四分位範囲[IQR]:66~73])と、年齢をマッチさせた対照5万5,890例(70歳[66~73])を同定した。
主要アウトカムは、あらゆる原因による認知症の発症(初回診断または認知症治療薬の初回使用で定義)であり、補正後ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。
連続投与、周期的投与でも正の相関
ホルモン療法を受けたことがない女性と比較して、エストロゲン-プロゲスチン療法(エストロゲン全身投与、エストロゲン膣内投与、プロゲスチン単独、エストロゲン-プロゲスチン併用療法)を受けた女性は、あらゆる原因による認知症の発症率が高かった(HR:1.24、95%CI:1.17~1.33)。
また、ホルモン療法の期間が長くなるに従ってHRは大きくなり、投与期間が1年以内の場合は1.21(95%CI:1.09~1.35)、12年以上になると1.74(95%CI:1.45~2.10)であった。
連続投与レジメン(HR:1.31、95%CI:1.18~1.46)および周期的投与レジメン(1.24、1.13~1.35)の双方で、エストロゲン-プロゲスチン療法は認知症の発症と正の相関が認められた。
さらに、55歳以下でホルモン療法を受けた女性(HR:1.24、95%CI:1.11~1.40)でも、エストロゲン-プロゲスチン療法と認知症の発症には関連がみられ、65歳以降に発症した遅発型認知症(1.21、1.12~1.30)やアルツハイマー病(1.22、1.07~1.39)に限定しても、同様の知見が得られた。
著者は、「更年期のホルモン療法への曝露は、閉経年齢前後の短期的な使用であっても、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病の発症と関連した」とし、「これらの知見が更年期ホルモン療法の認知症リスクへの実際の影響によるものなのか、あるいはホルモン療法を必要とする女性の根本的な素因を反映しているのかを明らかにするには、さらなる研究を要する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)