膝下動脈疾患によるCLTI、エベロリムス溶出BVS vs.血管形成術/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/11/07

 

 膝下動脈疾患(infrapopliteal artery disease)に起因する包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia:CLTI)の患者の治療において、エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(Esprit BTK、Abbott Vascular製)は標準的な血管形成術と比較して、1年後の有効性に関する4つの項目(治療対象肢の足首より上部での切断など)の発生がない患者の割合が有意に優れ、6ヵ月後の主要下肢有害事象と周術期死亡は非劣性であることが、オーストラリア・Prince of Wales HospitalのRamon L. Varcoe氏らが実施した「LIFE-BTK試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年10月25日号に掲載された。

6ヵ国の無作為化対照比較試験

 LIFE-BTK試験は、6ヵ国50施設で実施した単盲検無作為化対照比較試験であり、2020年7月~2022年9月に参加者の適格性の評価を行った(Abbottの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、虚血性安静時疼痛(Rutherford-Becker分類4)または軽度の組織欠損(同分類5)がみられ、膝下動脈の狭窄または閉塞を有するCLTI患者とし、被験者を、エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールドの留置または血管形成術を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。

 有効性の主要エンドポイントは、1年後の次の4つの項目の非発生とした。(1)治療対象肢の足首より上部での切断、(2)標的血管の閉塞、(3)臨床所見に基づく標的病変の再血行再建、(4)標的病変のバイナリー再狭窄(血管造影で血管径の>50%の狭窄またはデュプレックス超音波検査で収縮期最大血流速度比[PSVR]≧2.0)。

 安全性の主要エンドポイントは、6ヵ月時の主要下肢有害事象(治療対象肢の足首より上部での切断、主要再介入[新規の外科的バイパス移植術、グラフト置換術、血栓回収療法、血栓溶解療法)および周術期の死亡(初回処置から30日以内の全死因死亡)の非発生であった。

重篤な有害事象の頻度は同程度

 261例を登録し、スキャフォールド群に173例(179標的病変)、血管形成術群に88例(92標的病変)を割り付けた。全体の平均(±SD)年齢は72.6±10.1歳、32%が女性であった。Rutherford-Becker分類4(虚血性安静時疼痛)は135例(52%)、Rutherford-Becker分類5(軽度の組織欠損)は126例(48%)で認めた。治療対象肢の創傷は130例(50%)にみられ、平均(±SD)足関節上腕血圧比は0.88±0.32だった。

 1年時の有効性の主要エンドポイント(イベントが発生しなかった患者)の達成患者は、血管形成術群が88例中48例(Kaplan-Meier法による推定割合44%)であったのに対し、スキャフォールド群は173例中135例(同74%)と有意に優れた(絶対群間差:30ポイント、95%信頼区間[CI]:15~46、優越性の片側p<0.001)。

 1年後までに、スキャフォールド群では、治療対象肢の足首より上部での切断が4例、標的血管の閉塞が18例、臨床所見に基づく標的病変の再血行再建が11例、標的病変のバイナリー再狭窄が35例で発生した。

 また、6ヵ月時の安全性の主要エンドポイント(イベントが発生しなかった患者)の達成患者は、血管形成術群が90例中90例(Kaplan-Meier法による推定割合100%)であったのに比べ、スキャフォールド群は170例中165例(同97%)であり、スキャフォールド群の血管形成術群に対する非劣性(非劣性マージン:-10ポイント)が示された(絶対群間差:-3ポイント、95%CI:-6~0、非劣性の片側p<0.001)。

 6ヵ月後までに、スキャフォールド群では、主要下肢有害事象が3例、周術期の死亡が2例発生した。

 1年後までに、創傷治癒は、スキャフォールド群が83例中37例(45%)で得られ、治癒までに要した平均(±SD)期間は196.7±130.1日であった。血管形成術群では、45例中25例(56%)で創傷治癒が得られ、治癒までの平均(±SD)期間は187.6±122.7日だった。また、初回処置に関連する重篤な有害事象は、スキャフォールド群が2%、血管形成術群は3%で発現した。

 なお著者は、「当初、有効性の主要エンドポイントは4項目のうちの3つ(1~3)の非発生であった。これを副次エンドポイントとして解析したところ有意差を認めた(p=0.03)。これにバイナリー再狭窄を加えた4項目の非発生に関する主解析では、スキャフォールド群の有効性が増強した。この変更は登録期間中に行われ、担当医や試験の関係者は治療群の割り付け情報を知らされていなかった」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 院長

J-CLEAR評議員