過体重または肥満の集団において、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)共受容体作動薬であるチルゼパチドは、36週間の投与で20%以上の体重減少をもたらし、投与を中止すると体重が大幅に増加したが、投与継続により初期の体重減少を維持あるいはさらに増強することが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らが実施した「SURMOUNT-4試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年12月11日号に掲載された。
36週の導入期間後に、投与継続とプラセボに無作為化
SURMOUNT-4試験は、4ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、台湾、米国)の70施設が参加した第III相投与中止臨床試験であり、2021年3月~2023年5月に実施された(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。
本試験では、非盲検下にチルゼパチド(最大耐用量として10mgまたは15mg、週1回)を36週間皮下投与する導入期間の後、被験者を盲検下にチルゼパチドを継続する群またはプラセボに切り換える群に無作為に割り付け、52週間投与した。
対象は、BMI値が30以上、またはBMI値27以上で糖尿病を除く体重関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患)を少なくとも1つ有する、年齢18歳以上の患者であった。
主要エンドポイントは、無作為化(36週目)から88週目までの52週間の体重の平均変化量とした。主な副次エンドポイントは、導入期間中の体重減少分の80%以上を88週目に維持していた患者の割合などであった。
投与継続で体重がさらに5.5%減少
670例(平均年齢48歳、女性473例[70.6%]、白人80.1%、平均体重107.3kg、平均BMI値38.4、平均ウエスト周囲長115.2cm)が36週の導入期間を完了し、チルゼパチド継続群335例、プラセボ群335例に割り付けられた。チルゼパチド導入期間中に、体重は平均で20.9%減少した。
36週目から88週目までの体重の平均変化量は、プラセボ群が14.0%増加したのに対し、チルゼパチド継続群は5.5%減少し、有意な差を認めた(群間差:-19.4%、95%信頼区間[CI]:-21.2~-17.7、p<0.001)。
88週目に、導入期間中の体重減少分の少なくとも80%を維持していた患者の割合は、プラセボ群が16.6%(55例)であったのに対し、チルゼパチド継続群は89.5%(300例)と有意に優れた(p<0.001)。また、36週目から88週目までのウエスト周囲長の変化量は、プラセボ群が7.8cm増加したのに対し、チルゼパチド継続群は4.3cm減少し、有意に良好だった(p<0.001)。
88週投与で体重25.3%減少、ウエスト22.4cm減少
0週目から88週目までに、体重(チルゼパチド継続群25.3%減少vs.プラセボ群9.9%減少、p<0.001)とウエスト周囲長(22.4cm減少vs.9.0cm減少、p<0.001)は、チルゼパチド継続群で有意に改善した。
36週目から88週目までに最も頻度の高かった有害事象は消化器イベントで、プラセボ群よりもチルゼパチド継続群で高頻度(下痢[10.7% vs.4.8%]、悪心[8.1% vs.2.7%]、嘔吐[5.7% vs.1.2%])であったが、多くが軽度~中等度だった。とくに注目すべき有害事象として、チルゼパチド継続群では悪性腫瘍(3例[0.9%]、プラセボ群も3例[0.9%])、主要有害心血管イベント(3例[0.9%])、重度または重篤な消化器イベント(6例[1.8%])、低血糖症(2例[0.6%])を認めた。
著者は、「これらの結果は、体重の再増加を予防し、体重減少の維持とこれに伴う心代謝系への有益性を保持するためには、チルゼパチドの投与を継続する必要があることを強調するものである」とし、「1年間プラセボに切り換えた後でも、体重が9.9%減少していた点は注目に値するが、心代謝系のリスク因子の最初の改善効果はほぼ消失しており、このような短期治療による長期の有益性とリスクを解明するために、さらなる研究を要する」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)