胎児の両側性腎無形成に起因する妊娠初期の無羊水症は、新生児に致死的な肺低形成を引き起こすが、連続的な羊水注入により羊水を回復させることで、胎児の肺の発達を促し、生存が可能になると示唆されている。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のJena L. Miller氏らは、連続的な羊水注入は新生児の致死的肺低形成を軽減するが、早産の増加と関連し、退院までの生存率は低いことを示した。研究の詳細は、JAMA誌2023年12月5日号で報告された。
米国9施設の非無作為化臨床試験
本研究は、米国の9施設が参加した非盲検前向き非無作為化臨床試験であり、2018年12月~2022年7月に行われた(米国・ユーニス・ケネディ・シュライバー国立小児保健・人間発達研究所[NICHD]の助成を受けた)。
孤立性両側性腎無形成による無羊水症が確認され、他の先天性異常のない21組の母体・胎児を対象とした。妊娠26週までに、超音波ガイド下で経皮的に、等張液を用いた羊水注入を開始した。注入の頻度は、妊娠期間に応じて正常な羊水レベルを維持するよう個別に設定した。
主要アウトカムは、新生児の生後14日以上の生存と、透析導入の複合とした。
主要アウトカムは生児出産17例中14例で達成
介入の有効性が示されたものの、主要アウトカムの領域を超える新生児の合併症と死亡が懸念されたため、18組の母体・胎児の中間解析に基づき、本試験は早期中止となった。
生児出産は17例(94%)で、分娩時の妊娠期間中央値は32週4日間(四分位範囲[IQR]:32~34週)と全般に早産であった。全参加者が37週までに出産していた。
生後14日以上の生存と透析導入は、17例の新生児のうち14例(82%)で達成された(95%信頼区間[CI]:44~99)。
主要アウトカムの生後14日以上の生存と関連する因子として、(1)羊水注入の回数(中央値)が多い(生存例14回vs.非生存例5回、p=0.01)、(2)初回羊水注入から早産期前期破水(PPROM)までの期間(中央値)が長い(66.0日vs.13.0日、p=0.04)、(3)妊娠期間が32週より長い(14例[100%]vs.1例[25%]、p=0.005)、(4)出生時体重が重い(2,010g vs.1,350g、p=0.03)が挙げられた。
生存退院は6例(35%)のみ
生後24週(中央値、範囲:13~32週)の時点で長期の腹膜透析を受けており、自宅へと生存退院した新生児は、17例中6例(35%)のみだった。
その後、2例が死亡した。1例は2歳時に透析関連の感染性合併症による死亡、1例は生後4ヵ月時に自宅で心停止後の死亡であった。3例(50%)が脳卒中を発症し、2例は長期生存している。
著者は、「退院までの生存率の低さは、肺機能とは別に、付加的な死亡負担が存在することを強調するものである」と指摘し、「生存している新生児のアウトカムの特性を完全に明らかにし、合併症と死亡の負担を評価するためには、さらなる長期データが求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)