内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)施行後の膵炎のリスクが高い患者における膵炎予防では、標準治療である非ステロイド性抗炎症薬インドメタシン+予防的膵管ステント留置の併用と比較して、インドメタシン単独投与は非劣性に至らないだけでなく予防効果が劣ることが、米国・サウスカロライナ医科大学のB. Joseph Elmunzer氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年1月11日号に掲載された。
北米20施設の無作為化非劣性試験
本研究は、米国とカナダの20施設で実施した無作為化非劣性試験であり、2015年9月~2023年1月に患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。
年齢18歳以上、ERCP後膵炎のリスクが高く、膵炎予防として膵管ステント留置を要する患者1,950例(ITT集団)を登録し、予防的膵管ステント留置を行う群に975例(平均年齢55.8歳、女性61.1%)、これを行わない群に975例(55.6歳、61.4%)を無作為に割り付けた。全例にインドメタシン(50mg坐剤×2個)の直腸内投与を行った。
主要アウトカムは、ERCP後膵炎とした。ITT集団とper-protocol(PP)集団の双方において、ERCP後膵炎発生の差の、両側95%信頼区間(CI)の上限値が5%未満の場合に非劣性と判定することとした。
ITT集団、PP集団の双方で非劣性を示せず
ITT集団では、ERCP後膵炎は、インドメタシン単独群が975例中145例(14.9%)、インドメタシン+膵管ステント留置群は975例中110例(11.3%)で発生し、両群間のリスク差は3.6%(95%CI:0.6~6.6)と、インドメタシン単独群のインドメタシン+膵管ステント留置群に対する非劣性は確認できなかった(非劣性のp=0.18)。
PP集団(1,728例)でも、同様の結果であった(ERCP後膵炎:単独群14.4% vs.併用群11.6%、リスク群間差:2.8%、95%CI:-0.3~6.0)。
一方、ERCP後膵炎の発生率に関する両群間のリスク差の事後的なITT解析では、インドメタシン+膵管ステント留置群と比較して、インドメタシン単独群で劣ることが示された(p=0.011)。
安全性アウトカムには差がない
サブグループ解析では、主要アウトカムに関する膵管ステント留置の相対的な有益性を、ほとんどのサブグループでほぼ一貫して認め、膵炎リスクが最も高い患者(リスクスコア≧3)で有益性がより顕著であった(リスク群間差:13.7%、95%CI:1.8~25.6)。この集団における1件のERCP後膵炎の予防に要する治療必要数(NNT)は7(95%CI:4~56)だった。
ITT集団における安全性アウトカム(重篤な有害事象[単独群36.4% vs.併用群36.1%、リスク群間差:-0.3%、95%CI:-4.6~4.0]、ICU入室率[3.0% vs.4.0%、-1.0%、-2.7~0.6]、平均入院期間[3.2日vs.2.9日、0.4日、-0.3~1.0])は両群間に差がなかった。
著者は、「これらの知見は、エビデンスがないにもかかわらず、予防的膵管ステント留置を行わない傾向が広まっている最近の状況に異議を唱えるものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)