胆管炎のない重症胆石性膵炎が疑われる患者に対し、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)による括約筋切開の実施は保存療法と比較して、主要な合併症または死亡の複合エンドポイントを低下しないことが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのNicolien J. Schepers氏らが232例を対象に行った多施設共同無作為化並行群間比較優越性試験の結果で、著者は「示された所見は、保存療法の選択を戦略として支持するものであった」と述べている。胆管炎のない胆石性膵炎患者については、ERCP・胆道括約筋切開術がアウトカムを改善するのか、依然として明らかになっていなかった。Lancet誌2020年7月18日号掲載の報告。
6ヵ月以内の死亡または主要合併症の発生を比較
研究グループは、オランダ国内26病院を通じて、胆管炎はないが重症胆石性膵炎が疑われる患者を対象に試験を行った。被験者の適格条件は、APACHE IIスコア8以上、Imrieスコア3以上、C反応性蛋白150mg/L超だった。
被験者をWebベースの無作為化モジュール(ランダム変化ブロックサイズ)を用いて1対1の割合で無作為に2群に分け、一方の群には来院24時間以内のERCPと括約筋切開術を(ERCP群)、もう一方の群には保存的治療を行い、胆管炎を発症した際にはERCPによる総胆管括約筋切開術を行った(対照群)。
主要エンドポイントは、無作為化後6ヵ月以内の死亡または主要合併症(新規発症の持続性の臓器不全、胆管炎、菌血症、肺炎、膵臓壊死、膵機能不全のいずれか)だった。解析は、intention to treatにて行った。
死亡・主な合併症の発生、ERCP群38%、対照群44%と同等
2013年2月28日~2017年3月1日に、被験者232例が無作為化を受けた(ERCP群118例、対照群114例)。ERCP群1例が胆管炎を、対照群1例が慢性膵炎を発症し、それぞれ最終解析から除外した。
主要エンドポイントは、ERCP群45/117例(38%)、対照群50/113例(44%)で発生した(リスク比[RR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.64~1.18、p=0.37)。
胆管炎の発生を除いて、主要エンドポイントの個々の項目における群間差はみられなかった。胆管炎の発症は、ERCP群2/117例(2%)、対照群11/113例(10%)であった(RR:0.18、95%CI:0.04~0.78、p=0.010)。
有害事象は、ERCP群87/118例(74%)、対照群91/114例(80%)で報告された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)