前立腺がん治療10年後の排尿・性機能、治療法による違いは?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/02

 

 限局性前立腺がん患者の治療後10年間の追跡調査の結果、ベースラインで受けた治療に応じて予後良好群に分類した患者では、前立腺全摘除術は外照射放射線療法(EBRT)または積極的監視療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。予後不良群に分類した患者では、前立腺全摘除術はEBRT+アンドロゲン除去療法(ADT)併用療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。しかし、EBRT+ADT併用療法は前立腺全摘除術と比較し、排便およびホルモン機能の悪化がみられたという。米国・バンダービルト大学医療センターのBashir Al Hussein Al Awamlh氏らが、観察コホート研究「CEASAR研究」の結果を報告した。JAMA誌2024年1月23・30日号掲載の報告。

ベースラインで受けた治療法別に患者を分類、10年後の機能的アウトカムを比較

 研究グループは、米国のSEER(Surveillance、Epidemiology、and End Results Program)の5つの登録デ-タを用い、2011~12年に限局性前立腺がん(cT1~T2c、cN0、cM0、前立腺特異抗原[PSA]<50ng/mL)と診断された80歳以下の男性を特定し、3,434例を診断後6ヵ月以内にCEASAR研究に登録した(解析対象は2,445例)。

 対象患者をベースラインで、予後良好群(cT1またはT2a/bN0M0、PSA:≦20ng/mL、グレードグループ1~2[低リスクおよび予後良好な中間リスク])(1,877例)と、予後不良群(cT2cN0M0、PSA:20~50ng/mL、グレードグループ3~5[予後不良な中間リスクおよび高リスク])(568例)に分け、2022年2月1日まで追跡調査を行った。

 予後良好群では根治的前立腺全摘除術(1,043例)、ADTを伴わないEBRT(359例)、低線量率小線源療法(96例)および積極的監視療法(379例)が、予後不良群では根治的前立腺全摘除術(362例)およびEBRT+ADT併用療法(206例)が実施された。

 主要アウトカムは、限局性前立腺がん患者の特異的QOL尺度であるEPIC-26(スコア範囲:0~100、100が最良)に基づく、自己報告による性機能、尿失禁、排尿刺激症状、排便およびホルモン機能であった。

 特定の治療法と各評価項目との関連を推定し、各ベースラインスコア、患者および腫瘍特性を補正して治療後10年時点で比較した。臨床的に重要な最小変化量(MCID)は、性機能10~12、尿失禁6~9、排尿刺激症状5~7、排便およびホルモン機能4~6とした。

治療法によって尿失禁、排便機能、ホルモン機能が悪化

 解析対象2,445例の患者背景は、年齢中央値64歳、黒人14%、ヒスパニック系8%で、追跡期間中央値は9.5年間であった。

 予後良好群1,877例では、根治的前立腺全摘除術は積極的監視療法と比較し、尿失禁の悪化がみられたが(補正後平均群間差:-12.1、95%信頼区間[CI]:-16.2~-8.0)、性機能の悪化はみられなかった(-7.2、-12.3~-2.0)。

 予後不良群568例では、根治的前立腺全摘除術はEBRT+ADT併用療法と比較し、尿失禁の悪化がみられたが(補正後平均群間差:-26.6、95%CI:-35.0~-18.2)、性機能の悪化はみられなかった(-1.4、-11.1~8.3)。一方、予後不良群では、EBRT+ADT併用療法は根治的前立腺全摘除術と比較し、排便機能(-4.9、-9.2~-0.7)およびホルモン機能(-4.9、-9.5~-0.3)の悪化が認められた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)