検診以外で発見された非浸潤性乳管がん(DCIS)の女性は、診断後少なくとも25年間は、一般集団の女性と比較して浸潤性乳がんや乳がん死のリスクが高く、検診でDCISが検出された女性に比べ長期的なリスクも高いことが、英国・オックスフォード大学のGurdeep S. Mannu氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月24日号に掲載された。
長期リスクを評価するイングランドのコホート研究
本研究は、検診以外で検出されたDCISにおける浸潤性乳がんと乳がん死の長期的なリスクの評価を目的に、一般集団の女性と検診でDCISと診断された女性を比較する住民ベースのコホート研究である(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。
1990~2018年に、英国国民保健サービス(NHS)の乳房検診プログラム以外でDCISと診断されたイングランドの女性2万7,543例を解析に含めた。
浸潤性乳がん、乳がん死の実測値は予測値より高い
2018年12月31日の時点で、検診以外でDCISと診断された女性のうち3,651例が浸潤性乳がんを発症した。これは、全国的ながん罹患率から予測される値の4倍以上であった(実測値/予測値の比:4.21、95%信頼区間[CI]:4.07~4.35)。また、浸潤性乳がん発症の実測値/予測値の比は、追跡期間を通じて高いままであった。DCIS診断時年齢別の、浸潤性乳がんの25年間の累積リスクは、45歳未満で27.3%、45~49歳で25.2%、50~59歳で21.7%、60~70歳で20.8%だった。
乳がんで死亡した女性は全体で908例。これは、一般集団の乳がん死亡率から予測される値のほぼ4倍(実測値/予測値の比:3.83[95%CI:3.59~4.09])であった。また、乳がんに起因する死亡の実測値/予測値の比は、追跡期間を通じて高値を維持していた。DCIS診断時年齢別の、乳がん死の25年間の累積リスクは、45歳未満で7.6%、45~49歳で5.8%、50~59歳で5.9%、60~70歳で6.2%であった。
乳房切除術は浸潤性乳がんを低減、乳がん死には影響せず
50~64歳(NHS乳房検診の対象年齢)の女性では、検診でDCISが検出された女性に対する、検診以外でDCISが検出された女性の、浸潤性乳がん発症の実測値/予測値の比は1.26(95%CI:1.17~1.35)、同じく乳がん死亡率の実測値/予測値の比は1.37(1.17~1.60)であった。
手術を受けた片側DCIS女性2万2,753例では、乳房温存術に比べ乳房切除術で、同側浸潤性乳がんの25年累積リスクが低かった(乳房切除術8.2%[95%CI:7.0~9.4]、乳房温存術+放射線治療:19.8%[16.2~23.4]、乳房温存術単独:20.6%[18.7~22.4])。
一方、乳がん死の25年累積リスクは、乳房切除術と乳房温存術(±放射線治療)で同程度であった(乳房切除術:6.5%[95%CI:4.9~10.9]、乳房温存術+放射線治療8.6%[5.9~15.5]、乳房温存術単独7.8%[6.3~11.5])。
著者は、「DCIS女性では、浸潤性乳がんと乳がん死のリスク増加が少なくとも25年間続いたことから、DCIS生存者は少なくとも30年間は、サーベイランスの恩恵を受ける可能性があると示唆された」としている。
(医学ライター 菅野 守)