急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(UTI)の治療において、セフェピム/taniborbactamはメロペネムに対する優越性が認められ、安全性プロファイルはメロペネムと同様であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. Wagenlehner氏らが15ヵ国68施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「Cefepime Rescue with Taniborbactam in Complicated UTI:CERTAIN-1試験」の結果、明らかとなった。カルバペネム耐性腸内細菌目細菌や多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、世界的な健康上への脅威となっている。セフェピム/taniborbactam(CFPM/enmetazobactam)は、β-ラクタムおよびβ-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤で、セリンβ-ラクタマーゼおよびメタロβ-ラクタマーゼを発現する腸内細菌目細菌、および緑膿菌に対して活性を発揮することが示されていた。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。
セフェピム/taniborbactamの有効性と安全性をメロペネムと比較
研究グループは、複雑性UTIまたは急性腎盂腎炎と診断された18歳以上の入院患者を、セフェピム/taniborbactam(2.5g:セフェピム2g、taniborbactam0.5g)群またはメロペネム(1g)群に、2対1の割合に無作為に割り付け、8時間ごとに7日間静脈内投与した。菌血症を有する患者には、投与期間を最大14日間まで延長可とした。
主要アウトカムは、微生物学的ITT(microITT)集団(両治験薬が有効である、特定のグラム陰性菌を有する患者)における投与(試験)開始後19~23日目の微生物学的成功および臨床的成功の複合であった。複合成功率の群間差の95%信頼区間(CI)の下限値-15%を非劣性マージンとし、非劣性が認められた場合に優越性を評価することが事前に規定された。
有効性はメロペネムより優れ、安全性は類似
2019年8月~2021年12月に661例が無作為化され、このうち436例(66.0%)がmicroITT集団であった。microITT集団の平均年齢は56.2歳で、65歳以上が38.1%、複雑性UTI 57.8%、急性腎盂腎炎42.2%、ベースラインで菌血症を有した患者13.1%であった。
複合成功は、セフェピム/taniborbactam群で293例中207例(70.6%)、メロペネム群で143例中83例(58.0%)に認められた。複合成功率の群間差は12.6ポイント(95%CI:3.1~22.2、p=0.009)であり、セフェピム/taniborbactamのメロペネムに対する優越性が示された。
複合成功の差異は、後期追跡調査(試験開始後28~35日目)においても持続しており、セフェピム/taniborbactam群のほうが複合成功率および臨床的成功率が高かった。
安全性解析対象集団(657例)において、有害事象はセフェピム/taniborbactam群で35.5%、メロペネム群で29.0%に認められ、主な事象は頭痛、下痢、便秘、高血圧、悪心であった。重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であった(それぞれ2.0%、1.8%)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)