がん罹患数が著増、がん死は減少~英国の25年/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/03/26

 

 英国の年齢35~69歳の集団では、1993~2018年の25年間にがん罹患数が大きく増加したのに対し、がんによる死亡率は減少しており、この減少にはがんの予防(喫煙防止策、禁煙プログラムなど)と早期発見(検診プログラムなど)の成功とともに、診断検査の改善やより有効性の高い治療法の開発が寄与している可能性があることが、英国・Cancer Research UKのJon Shelton氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年3月13日号に掲載された。

23部位のがんの後ろ向き調査

 研究グループは、1993~2018年の英国の年齢35~69歳の集団における、23の部位のがんの診断数および死亡数を後ろ向きに調査した(特定の研究助成は受けていない)。

 解析には、国家統計局、ウェールズ公衆衛生局、スコットランド公衆衛生局、Northern Ireland Cancer Registry、イングランド国民保健サービスなどのデータを用いた。

 主要アウトカムは、がんの年齢調整罹患率と年齢調整死亡率の経時的変化とした。

前立腺がんと乳がんが増加、ほかは安定的に推移

 35~69歳の年齢層におけるがん罹患数は、男性では1993年の5万5,014例から2018年には8万6,297例へと57%増加し、女性では6万187例から8万8,970例へと48%増加しており、年齢調整罹患率は男女とも年平均で0.8%上昇していた。

 この罹患数の増加は、主に前立腺がん(男性)と乳がん(女性)の増加によるものだった。これら2つの部位を除けば、他のすべてのがんを合わせた年齢調整罹患率は比較的安定的に推移していた。

 肺や喉頭など多くの部位のがんの罹患率が低下しており、これは英国全体の喫煙率の低下に牽引されている可能性が高いと推察された。一方、子宮や腎臓などのがんの罹患率の増加を認めたが、これは過体重/肥満などのリスク因子の保有率が上昇した結果と考えられた。

 また、罹患数の少ない一般的でないがんの傾向については、たとえば悪性黒色腫(年齢調整年間変化率:男性4.15%、女性3.48%)、肝がん(4.68%、3.87%)、口腔がん(3.37%、3.29%)、腎がん(2.65%、2.87%)などの罹患率の増加が顕著であった。

男女とも胃がん死が著明に減少

 25年間のがんによる死亡数は、男性では1993年の3万2,878例から2018年には2万6,322例へと20%減少し、女性では2万8,516例から2万3,719例へと17%減少しており、年齢調整死亡率はすべてのがんを合わせて、男性で37%(年平均で-2.0%)低下し、女性で33%(-1.6%)低下していた。

 死亡率が最も低下したのは、男性では胃がん(年齢調整年間変化率:-5.13%)、中皮腫(-4.17%)、膀胱がん(-3.24%)であり、女性では胃がん(-4.23%)、子宮頸がん(-3.58%)、非ホジキンリンパ腫(-3.24%)だった。罹患率と死亡率の変化の多くは、変化の大きさが比較的小さい場合でも統計学的に有意であった。

 著者は、「喫煙以外のリスク因子の増加が、罹患数の少ない特定のがんの罹患率増加の原因と考えられる」「組織的な集団検診プログラムは、がん罹患率の増加をもたらしたが、英国全体のがん死亡率の減少にも寄与した可能性がある」「この解析の結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を含めて、がんの罹患率およびアウトカムの今後10年間の評価基準となるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)