前立腺がん15年後の転帰、監視vs.手術vs.放射線/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/03/27

 

 英国・オックスフォード大学のFreddie C. Hamdy氏らは、Prostate Testing for Cancer and Treatment(ProtecT)試験の追跡調査期間中央値15年時点における、PSA監視療法vs.根治的前立腺全摘除術vs.内分泌療法併用根治的放射線療法の有効性を比較し、いずれの治療法でも前立腺がん特異的死亡率は低いことを明らかにした。著者は、「新たに限局性前立腺がんと診断された患者に対しては、治療の有益性と有害性のバランスを慎重に検討して治療法を選択する必要がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2023年3月11日号掲載の報告。

限局性前立腺がん患者約1,600例で、15年間の予後を解析

 ProtecT試験では、1999~2009年に英国の9施設において、PSA検査を受けた50~69歳の男性8万2,429例が登録された。余命が10年以上で治療の対象となる限局性前立腺がんと診断されたのは2,664例で、このうち1,643例が有効性を評価する試験に登録され、PSA監視療法群(545例)、根治的前立腺全摘除術群(553例)、ネオアジュバントアンドロゲン除去療法併用放射線療法群(545例)に無作為に割り付けられた。

 研究グループは、追跡期間中央値15年(範囲:11~21)時点で、同割り付け治療集団について評価を行った。主要評価項目は、前立腺がん死。副次評価項目は全死因死亡、転移(画像診断またはPSA≧100ng/mL)、臨床的病勢進行(転移、cT3/T4、長期アンドロゲン除去療法の開始、尿管閉塞、直腸瘻、腫瘍増殖による尿道カテーテルの複合)、および長期アンドロゲン除去療法とした。

前立腺がん死、治療法で有意差なし

 追跡調査を完遂したのは、1,643例中1,610例(98.0%)であった。診断時のリスク層別化解析(D'Amico、CAPRA、Cambridge Prognostic Group)では、3分の1以上が中間リスクまたは高リスクであった。

 前立腺がん死は45例(2.7%)であった。内訳は、PSA監視療法群17例(3.1%)、前立腺全摘除術群12例(2.2%)、放射線療法群16例(2.9%)であり、各群で有意差は認められなかった(p=0.53)。

 全死因死亡は356例(21.7%)で、3群ともほぼ同数(それぞれ124例、117例、115例)であった。転移は、PSA監視療法群で51例(9.4%)、前立腺全摘除術群26例(4.7%)、放射線療法群27例(5.0%)に認められた。長期アンドロゲン除去療法は、それぞれ69例(12.7%)、40例(7.2%)、42例(7.7%)で開始され、臨床的病勢進行が報告されたのはそれぞれ141例(25.9%)、58例(10.5%)、60例(11.0%)であった。PSA監視療法群では、133例(24.4%)が追跡調査終了時に根治的治療ならびにアンドロゲン除去療法を受けることなく生存していた。

 事前に規定されたサブグループ解析の結果、3群の前立腺がん死の相対リスクは、診断時の年齢で異なることが示された。65歳未満では、PSA監視療法群または前立腺全摘除術群は、放射線療法群より前立腺がん死のリスクが低く、65歳以上では前立腺全摘除術群または放射線療法群が、PSA監視療法群より前立腺がん死のリスクが低かった。一方、ベースラインのPSA値、臨床病期、グリソングレード、腫瘍長、またはリスク層別化スコアは、3群の前立腺がん死亡相対リスクに影響しなかった。

(ケアネット)

専門家はこう見る

コメンテーター : 宮嶋 哲( みやじま あきら ) 氏

東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学 主任教授