ST上昇型心筋梗塞(STEMI)で心原性ショックを合併した患者の治療において、標準治療に加え循環補助用心内留置型ポンプカテーテルImpella CP(Abiomed製)を使用することにより、標準治療単独と比較して180日全死因死亡リスクは低下したが、有害事象の複合の発現率は増加した。デンマーク・コペンハーゲン大学病院RigshospitaletのJacob E. Moller氏らDanGer Shock Investigatorsが、デンマーク、ドイツおよび英国の計14施設で実施された無作為化比較試験「Danish-German Cardiogenic Shock trial:DanGer Shock試験」の結果を報告した。心原性ショックを呈したSTEMI患者に対する、微小軸流ポンプによる一時的な機械的循環補助の有用性は依然として不明であった。NEJM誌2024年4月18日号掲載の報告。
標準治療+Impella CP群vs.標準治療単独群、180日全死因死亡率を評価
研究グループは、STEMIで心原性ショックを呈した18歳以上の患者を、標準治療+Impella CP群(Impella CP群)または標準治療単独群(標準治療群)に無作為に割り付けた。院外心停止から蘇生し、心臓カテーテル検査室到着時に昏睡状態の患者、および明らかな右心不全の患者は除外した。
Impella CP群では、無作為化後ただちにImpella CPを挿入し、合併症が発生しなければ48時間以上可能な限り最高水準の性能でポンプを作動させた。両群とも、血行動態が不安定になった場合は機械的循環補助(Impella 5.0または体外生命維持装置)の追加が可能であった。
主要エンドポイントは、180日時点の全死因死亡(180日全死因死亡率)、安全性エンドポイントは重度の出血、下肢虚血、溶血、デバイス故障および大動脈弁逆流悪化の複合とした。
Impella CP群で180日全死因死亡率が26%低下
2013年1月~2023年7月に、計1,211例がスクリーニングされ、360例が無作為化された。無作為化後、同意撤回により5例が除外され、解析対象は355例(Impella CP群179例、標準治療単独群176例)であった(年齢中央値67歳、男性79.2%)。
180日全死因死亡率は、Impella CP群45.8%(82/179例)、標準治療群58.5%(103/176例)であり、ハザード比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.55~0.99、p=0.04)であった。
安全性複合エンドポイントのイベントは、Impella CP群で43例(24.0%)、標準治療群で11例(6.2%)に発生し、相対リスクは4.74(95%CI:2.36~9.55)であった。腎代替療法はImpella CP群で75例(41.9%)、標準治療群で47例(26.7%)に導入された(相対リスク:1.98、95%CI:1.27~3.09)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)