先天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者では、遺伝子組み換えADAMTS13の予防的投与後のADAMTS13活性が正常値である101%を達成し、有害事象の大部分は軽度~中等度で、TTPイベントや症状の発現はまれであることが、英国・ロンドン大学病院のMarie Scully氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年5月2日号に掲載された。
第III相無作為化2期クロスオーバー試験の中間解析
本研究は、欧州連合(EU)、米国、英国、日本の34施設で実施した第III相非盲検無作為化2期クロスオーバー試験であり、今回の中間解析では、2017年10月~2022年8月に登録した患者の結果が報告された(Takeda Development Center AmericasとBaxalta Innovationsの助成を受けた)。
年齢0~70歳で、分子遺伝学的検査で先天性TTPと確定し、ADAMTS13活性が10%未満の患者を対象とした。スクリーニング時に急性TTPイベントを認めなかった患者を予防コホート、急性TTPイベントを認めた患者をオンデマンドコホートとした。
被験者を、1期目として6ヵ月間、遺伝子組み換えADAMTS13(40 IU/kg体重、静脈内投与)の予防的投与を行う群、または標準治療(血漿由来製剤)の予防的投与を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付け、引き続き2期目の6ヵ月間はこれらの治療を入れ替えた。その後、6ヵ月間、全例にADAMTS13を投与した。
主要アウトカムは急性TTPイベントであった。急性TTPイベントが発生した患者はオンデマンド治療を受けられることとした。
最も頻度の高いTTP症状は血小板減少症
48例(年齢中央値33歳[範囲:3~68]、女性28例[58%])を無作為化の対象とした。ADAMTS13投与期間後に標準治療を受けた患者が21例、標準治療期間後にADAMTS13投与を受けた患者が27例だった。中間解析時に、32例が試験を完了しており、14例が継続中で、2例は中止した。
急性TTPイベントは、ADAMTS13の予防的投与期間中には発生しなかったのに対し、標準治療の予防的投与期間中には1例で発生した(年間イベント発生率の平均値0.05、95%信頼区間[CI]:0.00~0.14)。
最も頻度の高いTTPの症状は血小板減少症で、1期と2期を通じた年間イベント発生率はADAMTS13群が0.74、標準治療群は1.73であった(推定比:0.4、95%CI:0.3~0.7)。また、乳酸脱水素酵素(LDH)値の上昇(平均年間イベント発生率:ADAMTS13群0.26 vs.標準治療群0.74、推定比:0.4[95%CI:0.1~1.1])、神経症状(0.18 vs.0.29、0.6[0.3~1.2])、腹痛(0.11 vs.0.17、0.6[0.2~2.3])も、標準治療群に比べADAMTS13群で低い傾向を認めた。
有害事象は重度7%、試験薬関連9%、中和抗体の発現はない
有害事象は、ADAMTS13投与中に71%、標準治療中に84%で発現した。大部分の有害事象の重症度は軽度~中等度で、重度の有害事象はADAMTS13投与中に7%、標準治療中に14%で発現した。ADAMTS13投与中に頻度が高かった有害事象は、頭痛、片頭痛、上咽頭炎、下痢であった。
担当医が試験薬関連と判定した有害事象は、ADAMTS13投与中に9%、標準治療中に48%で認めた。有害事象による試験薬の中断または中止は、ADAMTS13投与中にはみられなかったが、標準治療中には8例で発生した。ADAMTS13投与中に中和抗体の発現はなかった。
治療後のADAMTS13の最大活性の平均値は、標準療法後が19%であったのに対し、ADAMTS13投与後は101%だった。
著者は、「これらの知見により、遺伝子組み換えADAMTS13は先天性TTP患者に対する有効な予防的治療法であることが示された」としている。
(医学ライター 菅野 守)