TTP診療ガイド2023改訂のポイント~Minds方式の診療ガイドラインを視野に

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/24

 

「血液凝固異常症等に関する研究班」TTPグループの専門家によるコンセンサスとして2017年に作成され、2020年に部分改訂された、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の診療ガイドライン、『血栓性血小板減少性紫斑病診療ガイド2023』が7月に公開された。2023年版では、Minds方式の診療ガイドラインを視野に、リツキシマブに対してclinical question(CQ)が設定され、エビデンスや推奨が掲載された。

主な改訂ポイント

・リツキシマブの推奨内容の追加・変更とCQの掲載
・カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択に
・抗血小板薬、FFP輸注に関する記述を追加
・FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述を追加
・増悪因子に関する記述を追加

リツキシマブを後天性TTPの急性期、寛解期にも推奨

 難治例を中心に広く使用されているリツキシマブであるが、2023年版では、後天性TTPの急性期に投与を考慮しても良い(保険適用外、推奨度2B)としている。ただし、とくに初回投与時のインフュージョンリアクションに注意が必要としている。また、難治例、早期再発例(推奨度1B)や寛解期(保険適用外)でのリツキシマブ使用についての記載も追加された。再発・難治例では、治療の効果と安全性が確認されており、国内で保険適用もあることから推奨するとし、後天性TTPの寛解期では、ADAMTS13活性が10%未満に著減した場合、再発予防にリツキシマブの投与を検討しても良いとした。

リツキシマブの使用に関するCQを掲載

 上述のとおり、2023年版ではリツキシマブの使用に関する記載が大幅に追加されたが、さらに巻末には、リツキシマブの急性期、難治例・早期再発例、寛解期における使用に関するCQも掲載されている。これらのCQに対するAnswerおよび解説を作成するに当たり、エビデンス収集のため、2022年1月7日時点で過去10年間にPubMedに登録されたTTPに関するリツキシマブの英語論文の精査が行われた。各CQに対する解説では、国際血栓止血学会TTPガイドライン2020などのガイドラインや臨床試験、システマティックレビュー、症例報告の有効性に関する報告を詳細に紹介したうえで、各CQに対し以下のAnswerを記載している。

・後天性TTPの急性期に、リツキシマブ投与を考慮しても良い(推奨度2B)(保険適用外)
・後天性TTPの再発・難治例にリツキシマブ投与を推奨する(推奨度1B)
・後天性TTPの寛解期にADAMTS13活性が10%未満に著減した場合、再発予防にリツキシマブの投与を検討しても良い(推奨度2B)(保険適用外)

カプラシズマブが後天性TTP治療の第一選択として記載

 2023年版では、カプラシズマブが2022年9月に日本でも販売承認されたことが報告された。本ガイドでは、カプラシズマブを推奨度1Aの後天性TTP急性期の治療としている。投与30日以降もADAMTS13活性が10%を超えない場合は、追加で28日間継続可能であること、ADAMTS13活性著減を確認する前に開始可能であるが、活性が10%以上でTTPが否定された場合は速やかに中止すべきであることが述べられている。

その他の治療に関する改訂ポイント(抗血小板薬、FFP輸注)

 急性期の治療として用いられる抗血小板薬(推奨度2B)については、血小板とvon Willebrand因子(VWF)を中心とした血小板血栓によってTTPが発症することからTTP治療に有効である可能性があるとしたが、急性期での使用により出血症状が認められたとの報告、チクロピジンやクロピドグレルの使用はTTP患者では避けられていること、アスピリンとカプラシズマブの併用は出血症状を助長する可能性があり避けるべきである等の内容が加えられた。先天性TTPの治療へのFFP輸注の使用(推奨度1B)の記載についても追加がなされた。国際血栓止血学会のTTPガイドラィンで推奨する用量(10~15mL/kg、1~3週ごと)は日本人には量が多く困難な場合があることや、長期的な臓器障害の予防に必要なFFPの量は現状では明らかではない等の内容が加えられた。

TTPの診断に関する改訂ポイント

 ADAMTS13検査やインヒビター検査は結果が得られるまで時間がかかり、TTP治療の早期開始の妨げになっている。そこで、2023年版では、ADAMTS13活性著減の予想に用いられる、FrenchスコアとPLASMICスコアに関する記述が追加された。これら2つのスコアリングシステムについて、ADAMTS13活性著減を予測するが、血栓性微小血管症(TMA)が疑われる症例においてのみ用いられるべきことを明示した。

増悪因子に関する記述を追加

 2023年版では、TTP発作を誘発する因子についての項目が加えられた。増悪因子として、出生直後の動脈管の開存、ウイルス/細菌感染症、妊娠およびアルコール多飲などが知られており、妊娠期にはFFP定期輸注を行うことが、妊娠管理に不可欠と考えられるとした。

(ケアネット)