遺伝性網膜変性症、CRISPR-Cas9遺伝子治療が有望/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/20

 

 CEP290遺伝子変異による遺伝性網膜変性症患者において、EDIT-101の単回投与は忍容性が良好で光受容体機能の改善が示された。米国・ハーバード大学医学部のEric A. Pierce氏らが、第I/II相非盲検単回投与漸増試験「BRILLIANCE試験」の結果を報告した。CEP290関連遺伝性網膜変性症は、早期に重度の視力低下を引き起こす。EDIT-101は、CEP290のイントロン26(IVS26バリアント)を標的としたCRISPR-Cas9生体内遺伝子編集治療。今回の結果を受けて著者は、「CEP290のIVS26変異体やその他の遺伝子変異による遺伝性網膜変性症の治療において、CRISPR-Cas9生体内遺伝子編集治療のさらなる研究を支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2024年5月6日号掲載の報告。

小児を含む遺伝性網膜変性症患者14例が対象

 研究グループは、スクリーニング時に3歳以上で、CEP290遺伝子のIVS26変異によるホモ接合体または複合ヘテロ接合体の遺伝性網膜変性症を有する患者を対象とし、prednisone(0.5mg/kg/日)経口投与の3日後に経毛様体扁平部硝子体切除を行い、視力が悪いほうの眼(試験眼)にEDIT-101を300μLまで単回網膜下注射した。術後はprednisoneを4週間投与し、その後15日間で漸減した。

 主要アウトカムは、有害事象および用量制限毒性を含む安全性であった。重要な有効性の副次アウトカムは、最高矯正視力のベースラインからの変化、暗順応下全視野刺激試験(FST)で測定した網膜感度、Ora-Visual Navigation Challenge(Ora-VNC)mobility testのスコア、National Eye Institute Visual Function Questionnaire-25(NEI VFQ-25)(成人)またはChildren's Visual Function Questionnaire(CVFQ)(小児)で測定した視覚関連QOLスコアであった。

 計14例がEDIT-101の投与を受けた。成人は12例(中央値37歳[範囲17~63]、17歳の1例は最初の同意取得後18歳となり、その後に投与)、小児は2例(9歳、14歳)で、成人には低用量(2例)、中間用量(5例)、高用量(5例)を、小児には中間用量を投与した。ベースラインの試験眼の最良矯正視力(logMAR)の範囲は0.6~3.9であった。

用量制限毒性はなし、有効性アウトカム3項目のうち1項目以上改善患者64%

 治療または処置に関連した眼の、重篤な有害事象ならびに用量制限毒性は認められなかった。眼以外の重篤な有害事象は4件、治療に関連した眼の有害事象は22件発生した。

 14例のうち4例(29%)で、最高矯正視力のベースラインからの変化に関する臨床的に意味のある改善(事前に規定された閾値0.3 logMAR)が認められた。

 赤色光を用いたFSTによる網膜感度の評価では、6例(43%)で視覚的に意味のある改善が認められ、うち5例は少なくとも1つの他の重要な副次アウトカムの改善を示した。Ora-VNC mobility testによるベースラインから3点以上の改善は4例(29%)で、視覚関連QOLのベースラインから有意な改善(4ポイント以上上昇)は6例(43%)で認められた。

 最高矯正視力、FSTによる赤色光に対する網膜感度、またはOra-VNC mobility testのいずれかがベースラインから意味のある改善を示した患者は、9例(64%)であった。

(ケアネット)