慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術について、硬膜下洗浄を行わない場合(洗浄なし群)の6ヵ月以内の再手術率は、行った場合(洗浄あり群)より6.0%ポイント高率であり、洗浄なし群の洗浄あり群に対する非劣性は示されなかったことを、フィンランド・ヘルシンキ大学のRahul Raj氏らFinnish study of intraoperative irrigation versus drain alone after evacuation of CSDH(FINISH)試験グループが報告した。慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術には、アクセス用穿頭孔の作成、硬膜下腔の洗浄、硬膜下ドレーンの挿入という3つの要素が含まれる。硬膜下ドレーンの有益性は確立されているが、硬膜下洗浄の治療効果は検討されていなかった。結果を踏まえて著者は、「機能的アウトカムや死亡率について群間差がなかったことを考慮すると、硬膜下洗浄を行うことを支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年6月6日号掲載の報告。
術後6ヵ月以内の再手術率を評価、非劣性マージン7.5%
FINISH試験はフィンランドの5つの脳神経外科ユニットで実施された、研究者主導の実践的多施設共同無作為化並行群間非劣性試験であり、穿頭ドレナージを要する慢性硬膜下血腫を有する18歳以上の成人を登録して行われた。
被験者は、硬膜下洗浄を行う穿頭ドレナージ群(洗浄あり群)または硬膜下洗浄を行わない穿頭ドレナージ群(洗浄なし群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。コンピュータ生成ブロック無作為化法(4、6、8ブロックサイズ)が用いられ、試験地による層別化も行われた。
脳神経外科医および手術室スタッフを除き、すべての患者およびスタッフは治療割り付けが盲検化された。
両群ともに、穿頭孔は血腫厚が最大の部位に開けられ、硬膜下腔を洗浄せずに硬膜下ドレーンを挿入、または硬膜下腔を洗浄したうえで硬膜下ドレーンを挿入。ドレーンは48時間留置された。
再手術、機能的アウトカム、死亡および有害事象を、手術後6ヵ月間記録し評価した。主要アウトカムは、6ヵ月以内の再手術とし、非劣性マージンは7.5%で設定した。非劣性を結論付けるためには重要な副次アウトカムの達成も求められた。重要な副次アウトカムは、6ヵ月時点の機能的アウトカムが不良(すなわち修正Rankinスケールスコア4~6、スコア範囲:0[症状なし]~6[死亡])であった被験者の割合および死亡率であった。主要アウトカムおよび重要な副次アウトカムの解析評価はいずれもITT集団およびper-protocol集団で行われた。
群間差6.0%ポイントで洗浄なし群の非劣性は示されず
2020年1月1日~2022年8月17日に1,644例が適格性の評価を受け、589例(36%)が無作為化され、割り付けられた治療を受けた(洗浄なし群295例、洗浄あり群294例、女性165例[28%]、男性424例[72%])。6ヵ月フォローアップは、2023年2月14日まで延長された。
ITT解析では、再手術が必要となった被験者は洗浄なし群54/295例(18.3%)、洗浄あり群37/294例(12.6%)であった(群間差:6.0%ポイント、95%信頼区間:0.2~11.7、p=0.30、試験地補正済み)。
修正Rankinスケールスコア4~6の被験者の割合(洗浄なし群37/283例[13.1%]vs. 洗浄あり群36/285例[12.6%]、p=0.89)、死亡率(18/295例[6.1%]vs.21/294例[7.1%]、p=0.58)のいずれも両群間で有意差は認められなかった。
主要ITT解析の結果は、per-protocol解析でも実質的に変わらなかった。
有害事象の発現件数は両群間で有意差はなく、最も多くみられた重篤な有害事象は全身性感染(洗浄なし群26/295例[8.8%]vs.洗浄あり群22/294例[7.5%])、頭蓋内出血(13/295例[4.4%]vs.7/294例[2.4%])、てんかん発作(5/295例[1.7%]vs.9/294例[3.1%])であった。
(ケアネット)